イイコの仮面
「一色さんさぁ、筋は良いんだけど…なんだろう、緊張してる?」
虚の討伐任務に連れていってもらった日、席官の先輩にそんなことを言われた。何がだめだったのか、どこがいけなかったのか、聞いてみてもはっきりした返事は返ってこなかった。
「もっとこう、思い切りやっていいんだよ?何かに遠慮してるのかしらないけど…勢いで咄嗟に動けるようにもしておかないと、万が一の時やばいことになるよ」
「…はい、気を付けます」
思い切りなんて言ったって、他の人が虚と戦っているところに割り込んで助太刀したって、下っぱがしゃしゃりでてきたとか思われたくないし。助けに入ってもし逆に私がやられてしまったら、カッコ悪くてしょうがない。
「一色さん、鬼道って苦手だっけ?」
「え、あ、はい…どちらかと言えば…」
「だよね。君が入隊した時、更木隊気質の女の子が来たって噂になってたから」
先輩はくすくすと笑ってそんなことを言う。私だって自分は十一番隊あたりに入れられるのかと思っていた。しかしそのことが、先輩たちの間で噂になっていたとは。私がもともと馬鹿で脳筋なこと、ばれていたのか?
「練習と実戦じゃ勝手が違うからさ、実戦にも慣れていかないとね。みんな大体、君に戦闘のセンスがあることは知ってるんだ。恥ずかしがらず、派手にやっていいよ」
真面目でおとなしめで良い子の振りをしていたけど、それもあまり意味が無かったということだろうか。今まで我慢し続けた私の努力とは。
「討伐任務…ほんとはいっぱい行きたいです」
「おっ、いいねぇ。じゃあお仕事どんどん回していい?」
「大丈夫です。体力だけは自信あるので」
「よし!じゃあ僕から上に相談してみるよ」
それから、宣言通り任務に出向くことが多くなった。
たくさん戦える機会を設けてもらえて、痛くて辛くて怖いときも多々あったけど、自分に力がついていっていると思うと、楽しかった。
「一色さーん」
「お仕事ですかっ!?」
呼ばれて勢いよく返事をしたら笑われてしまった。
「現世に四日間滞在できるけど、行きたい?」
「お、お仕事ですか…?」
「どっちかと言えば、息抜きの旅行かな。現世楽しんできてくれていいよ。もちろん、虚がでれば片付けて欲しいし、魂葬もしてね」
「そんな、ご褒美みたいなのいいんですか?」
「いいよ、最近頑張ってくれてたから。ほんとは僕が任された仕事だから頼むのもアレなんだけど、もし一色さんが行きたいならこの仕事あげようかと思って」
貪欲に生きても良いことってあるんだなぁ。
「さすがに死神になって数年の子一人に任せるのは申し訳ないから、誰かと一緒に行ってもいいよ」
「誰か?」
「席官でも、友達でも、後輩でも」
そんなの檜佐木くんと行きたいに決まってる。けどさすがに、そこまで欲張ったらバチがあたりそうで怖い。
「檜佐木くんでもいいんだよ」
「えっ」
「最近お仕事いっぱい任せちゃって彼と遊べてなかっただろ?」
「い、いいんですか?ほんとに?」
「いいんだよ、僕に任せて!」
先輩はびしっと親指を立てて去って行った。
四日間も檜佐木くんと遊び回れてしまえるだなんて。普段お休みがかぶることだって少ないから、遊び尽くすチャンスだ。時間を無駄にしないように張り切って行かなければ。
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