優等生と劣等生



「あの、ごめん、教科書見せてもらってもいい?」

馬鹿は馬鹿なりに頑張ろうと思ってはいたのだが、寮の部屋に教科書を忘れてきてしまった。それに気が付いたのが授業が始まる時だったため、近くの人に頼るしかなかった。
偶然横に座っていた知らない男子に声をかけた。かけてから気が付いたが、なんか目付きが悪くて怖そうな子だった。でも見た目に反して心は優しいのか、教科書をこっちに寄せて見やすいようにしてくれた。

「ありがと」

小声で礼を言ってみたのだが反応がない。仕方がないからまた後できちんとお礼を言うことにしよう。
そしてこの男子、授業中にあてられたのだが、私と違って難なく答えて正解もしていた。もしかして優等生なのだろうか。
そして私もいつも通りあてられるのだが、まぁ答えられるはずもなかった。残念でした。


「教科書ありがとね、助かったよー。君頭良いんだね?名前何て言うの?」
「…檜佐木修兵だ。この前剣術で戦った時自己紹介しただろ、覚えてないのか?」
「え、そうだっけ?」

ついに人の名前まで覚えられなくなったのかと絶望しかけたが、頬に刻まれた69の字を見て思い出した。

「あっ、ほんとだ!檜佐木くん!」
「どこ指さしてんだ、やめろ」

ついその数字を指さしてしまったのだが、手を抑えられて下げさせられてしまった。

「檜佐木くんちょっと強かったから覚えてるよー、ちょっとだけ」
「ちょっとだけかよ」
「え、だって戦ってた時間数秒だからちょっとだけしか記憶に無いよ」
「…そりゃそうだろうな、誰とやっても秒殺だもんな」
「えへ、照れる」

褒められた気がしたのだが、檜佐木くんはため息をついた。実は褒めてなんかなかったのかな。

「霊術院入る前から剣術習ってたのか?」
「え、全然。ここ入ってからみんなと同じスタートだよ」
「まじかよ、それなのにあんな強いのか…」
「まぁ、才能って奴だよね」
「頭は良くねぇみたいだけどな」

私に負けたことを怨んでいるのか、檜佐木くんはちょっと言い方がきつい。ちょっと頭良いからって偉そうに。

「なぁ、お前にこんなこと言うのすげぇ悔しいんだけど、剣術教えてくれないか?代わりに勉強教えてやるから」

勉強教えてもらうのはありがたいんだけど、勉強なんかしたくないというのが本音だ。でもこのまま、剣術と体術しかできない状態だと、進級が難しいみたいなことを先生に言われたし、勉強はしなきゃならない。

「わかった……勉強嫌だけど…教えてください……」
「…おう。じゃあ、よろしくな?」
「はい……」

あぁ、勉強なんかしたくない。


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