素直じゃない
「一色、今から暇か?」
授業が終わり、さっさと片付けて教室を出ようと思っていたのに、檜佐木くんが来てしまった。
「暇だけど…」
「じゃあちょっと付き合ってくれよ」
檜佐木くんにムカついてから三日間は檜佐木くんを完璧に避けることに成功していたのに、不覚だった。忙しいと言って避けることもできたかもしれないが、檜佐木くんに話しかけられて安心してしまっている自分がいて、それはできなかった。
「最近勉強みてないけど大丈夫か?忙しかったから声かけられなくて悪いな」
なんと、私が避けていたわけではなく檜佐木くんが忙しかったから喋らなかっただけだったというのか。これでは檜佐木くんは避けられていた気分になってないんじゃないか。
「…どうかしたのか?」
「……別に」
私ばっかり檜佐木くんを気にしていたなんて悔しすぎる。避けられてるのか!?と不安な気持ちにさせたかったのに、大失敗だ。
「気分悪いなら今日はやめとくか?」
檜佐木くんはまぁいつも通り優しい。優しいくせに、頭の悪い女とかひどいこと言うし、好きになるわけねーとかひどいこと言う。嫌いなら構ってくれなくていいんだけど。
「檜佐木くん、私のこと嫌いなの?」
「はぁ?」
何言ってんだこいつ、みたいな目で見られる。そんな呆れなくてもいいでしょうが。
「別に嫌いではねーけど」
「……頭の悪い女は好きになるわけないみたいなこと、言ってるの、聞いた。だから、嫌いなのかなって」
「いや、まぁ頭悪い女は嫌いだけど」
やっぱ嫌いなんじゃん。ひどい。
「けど一色は最近勉強も頑張ってるし、まぁいいかな、と」
「だから嫌いじゃない?」
「そう言ってんだろ」
ちょっとだけ安心した。
「つーか、嫌いな奴とわざわざ二人になって特訓したり勉強教えたりするわけねぇだろ。考えろ馬鹿」
「んー、ほんとだね、もしかして檜佐木くんって私のこと好きなの?」
「そういうこと軽々しく聞いてくる馬鹿好きになるわけねーだろ」
「えぇひどい!じゃあ私も檜佐木くんのこと好きじゃないからこれから手加減してあげない」
「はぁ?今まで手加減してたのか?」
「え、うん」
檜佐木くんは少しショックを受けていた。私をへこませた罰として受け取ってもらいたい。
「さぁ私のことを好きでも嫌いでもない檜佐木くん!本気の特訓といこうじゃないか!」
「なんか怒ってんのか?」
「べつに!」
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