大好きだって



「あんた檜佐木くんの何なわけ?彼女でもないなら檜佐木くんにべたべたするのやめてくれる?檜佐木くんも迷惑だと思うの」

かわいい子が話しかけてきてくれたと思ったら、嫌みを言いたかっただけらしい。檜佐木くんってモテるんだなぁ、とそれで初めて認識した。

「馬鹿なんだから、ちょっとかわいいからって調子にのらないでよ」
「…えっ、私かわいい?照れるーありがと」
「褒めてないわよ!!」

かわいいって褒め言葉じゃなかったっけ?

「とにかく、迷惑だから檜佐木くんに色目使わないで」
「使ってないし、別に檜佐木くん私のこと好きじゃないし、私も檜佐木くんのこと好きじゃないよ?あなたが檜佐木くん好きなら、勝手に告白でもすれば?私ただの友達だから、関係無いし。好きにしてよ」

檜佐木くんの色恋に勝手に私を混ぜないでほしい。彼女になりたいなら勝手になればいいじゃないか。あ、でも今これだけ嫉妬深いなら、この子が彼女になったら檜佐木くんに勉強教えてもらえなくなるかな。それは困る。

「このあと檜佐木くんと約束あるから私もう行くね?」
「なっ、」

勉強教えてもらう約束だから、遅れるわけにはいかない。話を切り上げて檜佐木くんのところへ向かった。


「おまたせー」
「おせーよ」
「ごめんごめん、引き留められちゃって」

あの子、こんな目付き悪い意地悪な檜佐木くんのどこに惚れたんだろう。勉強教えてくれたりとか優しいと言えば優しいけど、遠目に見ててこれに惚れることなんてあるのかな。

「何ジロジロ見てんだよ」
「いや…檜佐木くんのどこが好きなのかなって思って」
「…は?」

ブスかかっこいいかで言ったら、まぁかっこいいんだろう。でも目付き怖いし、これかっこいいとかじゃないでしょ。無愛想だし全然笑ってくれないし、これ彼氏にしてもつまんないでしょ。無愛想なとこをクールでかっこいいみたいに捉えてるのかな?

「…好きなのか?」
「んー、なんか、大好きみたい」

私にわざわざ喧嘩売ってくる程には檜佐木くんのことが好きらしい。頭悪いから大丈夫だと思ったのかもしれないけど、もし私が血の気の多い奴だったらさっきぶち切れてたと思う。喧嘩売るなら相手の力の強さも考えた方がいいと思うけど。
なんて、檜佐木くんを観察しながら考えていたら、檜佐木くんは頬を赤らめていた。

「何照れてんの?」
「だ、大好きとか、軽々しく言うからだろうが」
「…あ、私がじゃないよ?さっき女の子が私に喧嘩売ってきて、檜佐木くんにべたべたしないでとか言ってきたからさ。あの子すごい檜佐木くんのこと好きなんだろうなーって思って」

経緯を説明したら檜佐木くんは尚更顔を赤くして、私の頭をべしっと叩いてきた。

「なんで!?」
「勘違いさせるな馬鹿!相手にちゃんと話が伝わるように喋れ!!だから馬鹿なんだよ!!」
「ひ、ひどくない!?勝手に勘違いしたの檜佐木くんじゃん!」
「うるせぇ!照れて損した!!」

だからって八つ当たりで叩かないでほしい。余計に馬鹿になりそうだ。

「あ、でも、たぶんそのうちほんとに檜佐木くんに直接告白しに来る子いると思うよ?私ちゃんと自分のこと檜佐木くんのただの友達って言っといたし。……って、友達だよね檜佐木くん?」
「友達以外何があんだよ」
「剣術の特訓に利用してるだけの関係かなってちょっと思っちゃったから聞いただけ。でも友達なんだもんね、へへー嬉しいー」

檜佐木くんはなぜかため息をついてあきれていた。私なにか変なこと言ったかな。

「まぁ、お前が馬鹿でよかったよ」
「何それ。褒めてんの?」
「あぁ。考えられる頭だったら、俺のせいで喧嘩売られた後にへらへらしながら俺に会いに来ねーだろ普通」
「…そうかな?」
「そうだろ、たぶん。まぁ、そのままでいてくれよ。他の女子にぎゃーぎゃー言われたからって理由で避けられても、特訓できなくなるから俺が困る」

そうか、檜佐木くんには私が必要か。まぁ持ちつ持たれつな関係だしね。外野にとやかく言われたからって、私らが変わる必要なんか無いよね。

「檜佐木くんも、一色さんにちょっかいかけてんじゃねぇ!とか言われても避けたりしないでね」
「心配すんな。お前はそこまでモテねぇよ」
「まぁ俺はモテるけどな、とでも言いたいの? むかつくね?」
「事実だろ?」
「そーだけど、でも私だって少しはね? 一目惚れしましたとかこの前言われたからね?」
「まじかよ」

私だって、全くモテないわけではない。強くてかわいいんだから、一目惚れくらいあり得るでしょ。馬鹿なところはマイナスかもしれないけど。

「断ったのか?」
「うん。だって一目惚れだよ? 可愛いのはわかるけど、中身知らないのに付き合おうとか思うの私より馬鹿でしょ、やだ」
「だよなー」

さすがに自分より頭の悪い男は嫌だ。せめて私より優れたところがあってくれないと。まぁもともと誰かと付き合う気がないから関係無いんだけど。


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