大ファンです
「はじめまして、プロデュース科に転校してきた山田楓です!」
敬人くんと面と向かって話すのは初めてなので、一応挨拶から始めてみた。
「知っている。というか、日々樹に連れられて生徒会室に来たときに顔は合わせているだろうが」
「えっ、私認知されてた!?」
「当たり前だ。…まぁいい、俺は蓮巳敬人だ。よろしくな」
「は、はい!よろしく!」
まさかあのとき事務処理をしながら私のことを認知していたなんて。敬人くんに認知されていたなんて。
「何をにやにやしているんだ」
「こいつ、元々俺らのファンだったんだとよ」
「…紅月のライブに来ていたのか。浮かれるのは構わんがプロデューサーとしての意識を忘れるなよ」
「デッドマンズの方だよ」
紅郎くんは敬人くんに全部ばらしてしまった。絶対に面白がってるじゃないか。
「あんな一夜限りの出来事を知っている奴がこの夢ノ咲に入ってくるなんてな…。あれは闇に葬るべき過去だ」
「…でもみんなかっこよかったよ?またやってほしいくらい」
「朔間さんがやりたいと言い出さない限りそれは無理な話だな。…無駄話していないでさっさとレッスンを始めるぞ。神崎はどうした?」
そりゃそうだ。あの崩壊を見れば、またあの姿を生で見ることなんてできるわけがない。
「あいつが時間通りに来ないなんて珍しいな。遅刻の連絡も来てねぇし」
「私呼んで来ようか?」
「入れ違いになっても困るから待っていろ。それに、貴様が神崎を知っていても神崎からしたら知らん女だ。警戒されるぞ」
ライブ映像でしか見たことないけど、神崎くんとやらはそんなお堅い子なのか。真面目そうにふるまっておかないと。
「そういえば紅月の衣装のほつれてたやつ、嬢ちゃんが直してくれたんだぜ。見てくれよ、なかなかの腕前だろ?」
「…ふむ。問題ないな」
「今まで演劇の衣装とか作ってたらしくてよ、俺も見せて貰ったがしっかりした作りだったんだ。紅月の衣装製作、これから嬢ちゃんに頼んでも構わねぇか?」
「へっ」
紅郎くんはそのお願いを私にしているのか敬人くんにしているのかわからなくて戸惑ってしまった。
「衣装に関しては鬼龍に任せている。そのお前が任せても大丈夫だと思うのなら俺は口出しはせん」
「そうか、ありがとな。一応リーダーだから許可は貰った方がいいかと思ってよ。嬢ちゃんはどうだ?手伝っちゃくれねぇか?」
そんなそんなそんな、憧れのアイドルに衣装を作るの手伝ってとお願いされて断れるとお思いで??私が手掛けた衣装に、大好きだったデッドマンズの敬人くんと紅郎くんが袖を通すの?もうそれだけで、この学院に来て良かったと喜べる。
「もちろん、私にできることなら喜んで!」
胸の高鳴りを隠して、平然を装って笑顔で返答してみせた。喜びすぎてドン引きされては困ってしまうから。
「すまぬ!言い訳をするつもりはないのであるが、日直だった故、れっすんに遅れてしまった!本当は遅れると一報めーるで送っておきたかったのであるが、めーるを作る時間より先に日直の仕事を片付けた方が早くれっすんに参加できると判断して、連絡を入れることができなかったのである!」
ノックもなくレッスン室に飛び込んできたのは、紅月のメンバーの神崎くんだった。少し息を乱しているし、教室から急いできてくれたのだろう。
「貴様が無断でレッスンをさぼるなどと思ってはいなかったから大丈夫だ。だが次からは簡素な文で構わんから遅れると伝えてくれ」
「承知いたした!」
ところで、と神崎くんは私に視線を向けて怪訝な表情をする。映像で見るよりも現物の方が綺麗な男の子だ。
「はじめまして、プロデュース科に転入してきた山田楓です」
「おお、プロデューサーであったか!拙者は2-A神崎颯馬である。今日は山田殿がれっすんを見てくれるのであるか?」
「そうです、これからよろしくね。衣装作りもお手伝いさせてもらうから、気になることあったらばんばん言ってね!」
「それは心強い!こちらこそ、よろしくお願い申し上げる」
言葉遣いにびっくりしてしまったが、きっといろんな人に突っ込まれているだろうと思い、触れないでおいた。
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