めんどくさいおにぃ



「…あの、左右田くん?」
「あ?んだよ…何か用か?」
「いや、あの…」

何か用か?はこっちの台詞だ。
今日は採集が終わってから、なぜか不機嫌そうな左右田くんに付きまとわれていた。昼食のためにレストランに集まってから、私を見付けると近寄ってきて、でも特に何か言うわけでもなく、そのまま隣に居座って、無言のまま昼食をとっていた。

「…私、そ、そろそろ行くね?」
「どこにだよ」
「どこって…」

本当に今日の左右田くんはどうしたんだろう。戸惑っていたら、「遠野さん!」と名前を呼ばれた。その声に私より先に左右田くんが敏感に反応し、振り向いた。

「今日こそ僕とデートしてくれない?」

狛枝くんにおでかけチケットを差し出されるのだが、なぜか左右田くんがその手を叩き払った。

「どうしたの、左右田くん」
「どうしたのじゃねーよ、オメーのせいだろが」
「僕のせい?僕何かしたっけ?」
「あ"ぁ?」

二人に何があったかは知らないが、私の周りで火花を散らされると困る。私にどうしてほしいんだ。

「僕と遠野さんがデートすることに、左右田くんは関係無いよね?君にこんなこと言うのおこがましいのは解ってるけど、ちょっと黙っててよ」

狛枝くんは笑顔で喧嘩を売り始めた。左右田くんは左右田くんで、怖い顔して狛枝くんを睨み付けているし、逃げ場がない。遠くで日寄子ちゃんが「うわぁ、めんどくさいおにぃトップ2が喧嘩してる〜」なんて嫌みったらしく笑っていた。助けて。

「ねぇ遠野さん、たまにはいいでしょ?」

めげずに言ってくる狛枝くんに対して、左右田くんは私の肩を掴んできた。

「よくねーって言ってんだろ?遠野は俺と遊ぶんだよ」
「それって本当?遠野さん」

二人に怖い顔で見られ、左右田くんの手にも力がこめられ、なんだか泣きたくなってきた。

「いや、あの…今日は、蜜柑ちゃんと遊ぶ予定なので!!」

思いきって真実を言ってみれば、拍子抜けしたのか二人とも無表情になってしまった。

「す、すみませぇん!私みたいな人が遠野さんと遊ぶ約束なんかしてしまって…!」

レストランの隅でこそこそしていた蜜柑ちゃんは泣きそうな声で謝ってきた。とにかくここから逃げたかったから、肩に乗っている左右田くんの手をどかして蜜柑ちゃんに駆け寄った。

「だ、大丈夫だから、早く遊びに行こうか」
「すみませぇん…」

蜜柑ちゃんの手を握り、私はレストランをあとにした。チラッと二人を見てみたら、狛枝くんはいつも通りの笑顔だったけど、左右田くんは怒っているしちょっとだけ泣きそうだった。二人に何があったのか、また後で確かめておかないと。

- 14 -

←前次→