みんな仲良く



狛枝くんとの喧嘩中だったとは言え、左右田くんは明日も俺と遊ぶんだよ!と言ってくれた。私も左右田くんと遊びたいけど、喧嘩中のその発言が本気だったのか解らなくて、本当に遊んでくれるのかどうか確められずにいた。一日経ったからもう今日のことだけど、今はもう昼食の時間なのにまだ左右田くんとは口を聞いていない。左右田くんからも話し掛けてこないし、もうソニアちゃんでも誘ったかな。


「遠野おねぇ」
「ん?」

どうしようかと悩みつつゆっくりとデザートを食べていたら、正面に座っていた日寄子ちゃんに呼ばれた。

「今日、左右田おにぃと喋ってないよね」
「え、よくわかったね」
「さっき採集アイツとだったんだけど、全然働かないし動かないしムカついてさ。怒鳴って聞いてやったら遠野おねぇに怒られたとかほざいてて、それほんとなの?」
「うーん、怒った…といえば、怒ったかな」

怒ったというか、叱ったって感じだけど。あのとき怒りはほとんど狛枝くんに向けたはずだったんだけどな。

「なんだ、じゃあやっぱ左右田おにぃが悪いんだね。左右田おにぃが勝手に勘違いして遠野おねぇのこと避けてるだけだったら、おねぇの代わりに踏み潰しにいこうかと思ってたけど、おにぃが悪いならこのまま放置してどんどんへこませてやろーよ」

にしし、と日寄子ちゃんは悪い笑みを浮かべる。別に左右田くんのことへこませたいわけじゃないし、誤解は解いておこう。デザートを口に掻き込んで、レストランを出ていったばかりの左右田くんを追いかけた。


「左右田くん、どこ行くの」
「は?え、遠野…や、部屋に戻ろうかと…思ってたんだけど…」

左右田くんは驚いた顔で私を見た。

「昨日狛枝くんに、遠野は明日も俺と遊ぶーとか言ってたくせに、遊んでくれないの?」
「…遊んでくれるのか?」
「そうだよ」
「…もう怒ってないか?」
「怒ってないよ」

左右田くんは気が弱い。昨日はあんなに狛枝くんに吠えてたくせに。

「じゃあ、その、どこ行く?」
「ゲームしよ」
「ん、わかった」

そういう私も、強気で物を言ったのは昨日狛枝くんに対してくらいだけど。


「わりーな、散らかってて」
「…うん」

左右田くんの部屋が散らかってるのはいつもな気がするけど、本人の言う通り、いつもの三割増しくらいで物が散乱していた。そこには私があげた覚えのあるラジオもあった。

「ねぇ左右田くん」
「ん?」
「私、左右田くんと遊ぶの楽しいよ」
「はっ!?」
「だから、楽しい思い出は楽しいままにしておきたいから、あんまり狛枝くんに突っ掛かっていくの、控えてほしいなーって思って…。…人の喧嘩してるとこ、見たくないから…」
「…」

左右田くんを挑発した狛枝くんが悪いのは解っているけど、狛枝くんにそれを言うために話しかけるのも躊躇われるし、ここは左右田くんに抑えてもらうしかない。

「…悪かったな、余計な口出しして」
「いや、あの、そういうことじゃなくて…なんていうか、わ、私のせいで左右田くんと狛枝くんが険悪になるのが嫌なだけであって…!」
「解ってる。要するに、私のために喧嘩しないで!ってことだろ?」

左右田くんは茶化すように笑ってきて、ちょっとムカついたけど、でもホッとした。

「そーです」
「認めるのかよ」
「…うん。でもわかってくれたならもういいよ、早くゲームしよ」
「へいへい」

私のために怒ってくれるのは嬉しいけど、みんなには仲良くしててほしい。

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