すいみん不足


あんなことがあったせいで、夜まともに眠れなかった。採集で疲れていたからきちんと寝るべきだったのに。
レストランに行けばもうみんな集まっていて、朝食が机に並べられていた。

「おはよ」

ドキッとした。たしかに今まで通りとは言ったが、朝から声をかけてくるとは思っていなかった。左右田くんは本当にいつも通り、何てことない顔をしていて、動揺している私の方がおかしく思えた。

「おはよう…」
「んだよ、元気ねーな」
「いやぁ、昨日の採集での疲れがまだ取れてなくてさ…」
「…」

左右田くんのせいで睡眠が削られたなんてことまでは言えやしない。けど左右田くんはそれを察したのか、眉尻を下げた。

「ごめん」

ぼそっとそう呟くと、左右田くんは私から離れて日向くんのところへ行ってしまった。

「なぁ日向、今日の採集なんだけどよぉ」

もしかして、左右田くんのことだから、私を休みにさせるつもりじゃないか。寝不足なんかでみんなの足を引っ張るのは嫌で、それを止めるため私も二人に近寄った。

「遠野の調子悪そうだから休ませてやってくれよ」
「待って待って、大丈夫だから、、ほんと、元気だし、」
「たしかに、昨日山まで行ってもらったしな。それに遠野、クマできてるぞ」
「えっ」

うわ、ちゃんと鏡見てこればよかった。寝不足の証拠じゃないか。

「今日はゆっくり休めよ。まだ期日まで余裕あるから、気にせずな」
「…ごめん。ありがと」
「気にすんなって言ってんだろ。オメーが倒れたら手間が増えるだろ」
「はーい…」

あんなことがあっても、やっぱり左右田くんは優しい。ほんとは左右田くんの方が私よりずっと思い悩んでいたはずなのに、それでも私のことを気にしてくれる。

「あ、空ちゃんおっはよー!って、あれ?和一ちゃんと仲直りしたんすか?」
「おはよー。まぁねー」

喧嘩したとか何かあったとか、そういう話なんて唯吹ちゃんにはしていなかったはずなのに、仲直りしたと思われるなんて。端から見てても私と左右田くんに距離ができてたの、解ったのかな。

「それより、空ちゃん顔色悪くないっすか?セクシーな水着で唯吹とデート、今日はやめとくっすか?」
「セクシーな水着は元々着る予定無いけど、採集休ませてもらうから午後にはきっと元気だし、大丈夫だよ」
「唯吹は空ちゃんに無理させるわけにはいかないっす!唯吹のコテージでお家デートにするっす!それなら、空ちゃんも安心して唯吹と一緒に居られるっすよね〜」

唯吹ちゃんは私の両手を包むように握りながら笑顔でそう言った。みんなして私のことを考えてくれるのが嬉しくて、私まで笑顔になれた。

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