女子たちの共同作業



お菓子を作ろう!という話を持ち掛けてみたら、女の子たち全員参加してくれることになって、嬉しかった。特に真昼ちゃんと唯吹ちゃんはノリノリだし、赤音ちゃんは食べ専としてだけど嬉しそうに集まってくれた。

「人数はいるわけだし、チーズケーキだけだと物足りないよね」
「シフォンケーキはいかがでしょう?紅茶にも合いますし、」
「私チョコレートのお菓子がいいな〜!」
「唯吹はとにかく色んな種類が食べたいっす!」
「オレは食えるなら何でもいいぞ!」
「マカロンもかわいいですよねぇ」

女の子だからか、みんな甘いものに目がなくて、作りたいものが決まらなくてちょっとだけ困ったけど、話し合いの結果、唯吹ちゃんの「色んな種類が食べたい」という意見を採用され、作りたいもの全部作ることになった。

「夕飯前にそんなに色々食べて大丈夫だろうか?それに、たくさんあっても余ってしまいそうだ」
「だったら、花村に言ってご飯少なめにしてもらっておけばいいんじゃない?お菓子だって余りそうだし…男子たちにも分けてあげよっか」

真昼ちゃんの打開策にペコちゃんも納得し、やっとお菓子作りが開始された。余るほど作るなら、無事に左右田くんにも食べて貰えそうだ。赤音ちゃんが抑えれば、だけど。


「わーーっ、すみませぇぇん!」
「あ、手が滑ったっす」
「ねー、うまくできないよぉ」

開始早々、罪木ちゃんのドジやら唯吹ちゃんのうっかりやら日寄子ちゃんの不器用さが仇となり、まだ何も出来上がっていないのに物が散乱し、必要以上に時間がかかることになってしまいそうで、真昼ちゃんにより三人は座って待っているように命じられた。


「次はどうすればよいのですか?」
「チョコレートを湯煎で溶かしてもらってもいいかな?」
「ゆせん…?」
「ボウルにお湯を入れてその熱で溶かすんだよ」
「なるほど!合点承知のすけです!」

ソニアちゃんはしっかりしているからレシピ通りにやってくれていたのだが、ここで問題が発生した。ボウルにお湯を入れたところに、そのままチョコレートを投入し始めた。

「そ、ソニアちゃん!そうじゃなくて!」
「え?」

王女だということをすっかり忘れていた。ざっくりとした説明で湯煎が伝わるわけがなかったんだ。事細かに説明するとソニアちゃんは少しショックを受けたようで「レシピを読み上げる係りになりますね」と言ってレシピ担当へと変わった。

「…四人で何種類も作れるかな」
「やれるところまでやろう」

私と真昼ちゃん、ペコちゃん、それと千秋ちゃんでお菓子作りを進めることとなった。




「男子のみんなー!唯吹たちがお菓子を作ったから食後のデザートで食べて欲しいっす!」

唯吹ちゃんの発表でみんな嬉しそうな反応を見せてくれてほっとする。

「待てよ、澪田が作ったのか…?」
「唯吹はへたくそだったのでみんなを盛り上げる係りをやったっす!空ちゃんが企画していっぱいがんばってくれたんすよ!」
「澪田が作ったんじゃねぇなら安心か」
「ひー!冬彦ちゃん唯吹に失礼っす!」

澪田ちゃんのお菓子作りの様子を思い返すと、九頭龍くんの心配も理解できる。

「デザートもいいけど僕の作ったご飯もちゃんと食べてね!」
「残したらオレが全部食っちまうからな!」
「終里さん…!」

みんなわいわいと楽しそうに席につき始めた。お菓子作り、やってよかったな。

「遠野さん」
「ん?」
「デザート、楽しみにしてるね」

狛枝くんはそれだけ私に伝えると、いつも通り適当な席について夕飯を食べ始めた。楽しみだと言われるのは嬉しいけど、何だろう、なんで私にだけそんなこと言うんだろう。私が企画したって言ったから?それにしても、なんだか嬉しくて意識してしまって、ちょっとだけ、ドキドキさせてもらった。

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