思いもよらず



デザートは美味しくて、みんなにも美味しく食べてもらえて、たくさんあったのに全部無くなった。花村くんにも褒めてもらえて、大満足の一日だった。
夕飯後も食器の片付けとかを手伝おうと思ったんだけど、デザートごちそうしてもらえて嬉しいから大丈夫だよ、と花村くんに言われ、コテージに帰ってゆっくり休むことにした。
慣れないことをして疲れたから、浴槽に湯を張ってゆっくり温まった。みんなとも仲良くなれた気がするし、めちゃくちゃ楽しかったし、明日の材料集めも気合い入れて頑張ろう。
一日の余韻に浸っていたら段々と逆上せてきた気がしたから、湯から出た。ちょうどそのタイミングで、呼び鈴が鳴らされた。


「はーい!ちょっと待って!」

夜に私の部屋を訪ねてくるなんて誰だろう。真昼ちゃんか誰かな。服を着るほどの余裕が無くて、軽く全身の水気をとって、バスタオルを体に巻いた状態で扉に向かった。

「ごめん、おまたせー…って」
「おーっす…うおっ!?」

扉の外に居たのは、真昼ちゃんではなく、他の女の子でもなく、左右田くんだった。

「わーっ、ごめん!お見苦しいところを!!」

勢いで扉を閉めてしまったけど、左右田くんは何か用があったからここまで来てくれたんだ。さすがに失礼かと思ってまた扉を少しだけ開けた。

「な、なんでそんな格好で出てくるんだよ」
「待たせたら悪いと思って…。そ、それで、何の用だったの?」

左右田くんは横を向いていて、目線をこっちに寄越そうとしなかった。気をきかせてくれてありがとう。

「その、今日の礼を言いたくてよ。美味かったから…」
「あ、ありがと」
「なんでオメーが礼言うんだよ。…あー、悪い。やっぱ明日出直すわ」
「そ、そっか、」
「…おやすみ。体冷やすなよ」

立ち去る左右田くんの頬はなんだか赤いようにも見えたけど、扉の隙間から見ていただけでは、左右田くんの顔色なんて長くは見ていられなかった。

「…恥ずかしい」

せっかくお礼まで言いに来てくれたのに、余計な気をつかわせてしまうだなんて。申し訳なさ過ぎる。明日、会ったら一言謝ったほうがいいかな。

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