デートしたい相手
朝コテージを出てレストランへ向かおうとすると、ちょうど前を歩く左右田くんを見つけた。声をかけないのもどうかと思ったので、駆け寄って隣まで追い付いた。
「おはよ、左右田くん」
「え?あぁ、おはよ」
昨夜のこともあり気まずかったが、何も気にしていないふりして挨拶をした。左右田くんも普通に挨拶を返してくれて、ほっとする。人前で肌を曝す変態露出女だとか思われてドン引きされていなくてよかった。
「昨日話途中になっちまってたけど、ほんとに美味かったぞ。ありがとな」
「うん、喜んでもらえて何よりだよ」
「さすがソニアさんって感じだよな!王女なのにお菓子作りもうまいなんてよ」
ソニアちゃんは作る作業の方にはあまり手を出していなかった…なんて、喜んでいる左右田くんにわざわざ言う必要は無いか。
「ソニアさんにお礼言いたいし、今日こそデート成功させるぜ!」
「…がんばってね」
キラキラと目を輝かせる左右田くんが、少しだけ羨ましく思う。らーぶらーぶな修学旅行と言われたのに、私はまだ、デートをしたい!!なんて思う相手がいない。
「おはよう遠野さん、左右田くん」
「げ、狛枝…」
「おはよう」
狛枝くんもレストランに向かうところだったらしく、私たちに追い付いて声をかけてきた。
「二人とも朝から一緒だなんて仲が良いみたいだね」
「そ、そうかな」
「今日は二人でおでかけの予定でも立ててたのかな?」
「ちげーーよ。俺はソニアさんとデートすんだよ」
囃し立てられているような気がしないでもないが、狛枝くんから悪意を感じるわけでもないし、興味本意で聞いてきているのだろう。だとしても、ひゅーひゅー!と言われている気分になってしまってちょっとヤダ。
「それなら遠野さん、まだ予定無かったりする?」
「そうだけど…」
「じゃあ、僕と一緒に…どうかな」
そう言って狛枝くんはおでかけチケットを差し出した。なんだ、狛枝くん、ただ私を誘いたかっただけなんだ。って、誘いたかった?私を?あ、私狛枝くんに誘われた?
「わ、私で良ければ」
「よかった!僕なんかに付き合ってくれるだなんて、遠野さんはやっぱり優しいね!」
そう露骨に喜ばれると恥ずかしいんだけど、解っててやってるのかな狛枝くんは。
「楽しみにしてるね」
ふふ、と微笑む狛枝くんの笑顔は綺麗で、少しだけどきっとしてしまった。
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