喜んで欲しいのに
「遠野、ちょっと」
狛枝くんとのお出掛けを終えて、その後の夕食も食べ終わろうとして皆がお喋りに夢中になっている頃、左右田くんがこそこそと話し掛けてきた。みんなに聞かれたくない話なのか、レストランの隅まで連行された。
「どうしたの?」
「ソニアさんに聞いたんだけどよぉ、昨日のデザート作り、ほとんどソニアさん作業してねーんじゃねぇか。んだよレシピ係って。ソニアさんは楽しかったって言ってたけどよぉ…俺がソニアさん手作りだと思って食ったチーズケーキにソニアさんは触れてなかったのかよ…」
ガッカリした表情をされ、少し申し訳無く思う。やっぱりお礼を言われた時にそのことも左右田くんに言っておくべきだったかな。
「…ごめん」
みんなに喜んでもらいたくてやったのに、左右田くんにそんな顔させてしまうだなんて。
「や、別に謝らせたかったわけじゃねーからな?そりゃあソニアさんの手が加わってないとはいえ、どれも美味かったのは本当だからな!」
謝ったらフォローを入れられて、なんだか気を遣わせてしまったようで更に落ち込む。私は面倒な性格をしている。
「あーっ、空ちゃんと和一ちゃん、そんなとこでこそこそ何してるんすか??ナイショ話っすか〜?」
「なっ…」
唯吹ちゃんの一言により、他のみんなも何だ何だ?と私たちの方を気にし始めた。
「なんでもねーよ!関係ねーだろ!」
「ナイショ話じゃないなら唯吹も混ぜて欲しいっす!何の話っすか?次の唯吹のソロライブの日程決めっすか?」
「お、オメーとは音楽の趣味が合わねーからそんなもん決めねーよ…!」
私も唯吹ちゃんみたいに、すぐに人を元気にさせられるような性格になりたかったなぁ。
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