内緒のリベンジ



「ソニアちゃん!おはよ!」

朝、一番にソニアちゃんに声をかけた。「おはようございます」と返してくれるだけでもソニアちゃんには気品が漂う。

「あのさ、よかったらまた一緒にお菓子作りしない?その、この前の、ソニアちゃんも楽しめてたかちょっと不安で…。自分の手で作った方が、きっと楽しいと思うから、あの…」

断られないか不安すぎて自分の声が消えそうになる。けどそんな不安を消し去るように、ソニアちゃんは私の手を両手で握ってくれた。

「また誘っていただけるなんて、嬉しいです!私、今度こそ失敗しないように善処致しますね!」
「ソニアちゃん…!うん、一個ずつ確認してやっていけば、きっと大丈夫だと思う!」
「頑張りましょう!よろしければ、今日にでもやりたいくらいですわ!」
「うん、それなら、今日やろっか。私も空いてるから大丈夫」
「それはよかったです!」

嬉しそうに笑ってもらえて安心した。

「二人だと何作っても食べきれないだろうし、できたら女の子たちにだけは食べてもらおうか」
「ええ、そうしましょう」
「食べてもらえるように、声かけておくね」

お菓子作りの計画を立てていたら、レストランにもどんどん人が集まってきた。左右田くんはソニアちゃんを見つけると、こっちに向かって近寄ってきた。

「おはようございますソニアさん!」
「おはようございます」
「おはよー…」

私もいるのにソニアちゃんの名前だけ呼ぶ左右田くんに、ちょっとだけムッとする。

「ソニアさん、今日こそ俺と一緒に、デート…じゃない、おでかけを…」
「すみません、今日は遠野さんと過ごす予定を立ててしまっているので」

左右田くんはキッと私を睨んできた。そんな目で見られても困る。

「遠野、俺もご一緒してもよいだろうか」

割りと丁寧に聞いてこられたけど、左右田くんの目が怖い。断ったら怒られそうだけど、でも今日は、誰にも邪魔をされるわけにはいかない。

「だめ」
「なっ、なんでだよぉ」
「左右田くんには内緒だもん」

少し八つ当たりの意味も込めつつそう言ってみれば、左右田くんは「ちくしょー…」と呟きながら日向くんの元へと去っていった。ちょっと可哀想な気もしたけど、しょうがない。

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