もくひょう


「御門……髪の毛どこやったの」

今日も弓親に特訓してもらうべく弓親に会いに行ったら、真剣な顔で肩を掴まれそう言われた。
最近ちょっと髪が伸びてきて女の子みたいだってまた市丸副隊長にからかわれたから、ちゃんと美容院で髪を切ってもらった。どうやらどこで誰に切ってもらったとかそんなことはどうでもいいらしく、弓親に肩を揺さぶられる。

「だって邪魔だったから…髪の毛なんか闘うのに必要無いじゃん」
「せっかく綺麗に伸びてきてたのにもったいない!」
「髪の毛なんかどうだろうと僕かわいいから大丈夫だってばー」
「調子に乗るな」

弓親は不満そうな顔で僕の髪の毛に指を通す。

「短い方が好きなの?」
「そーだよ。動いても邪魔にならないし女の子みたいって言われないし、手入れも楽だし……」
「手入れが面倒だから切ったんだ?」
「……」
「そうなんだ?」

否定できなくてごめんなさい。ただでさえ美容を気にしまくってて面倒だったから、少しでも楽したかったんだよ。

「まったく……」
「強くなって余裕ができたら髪の毛伸ばすのも考えるよ」
「まぁいいけど……短くてもちゃんと言い付け守ってくれてるようには見えるし」

そう言いながら、手入れの行き届いている僕の頬を撫でたり、手が荒れていないかをチェックされる。

「…なんか、左腕の血色悪くない?気のせい?」
「えっ、よくわかるね」
「どういうこと?」
「これ造り物だから」
「え」

弓親は僕の左腕を掲げてまじまじと見つめ観察する。感触とかも確かめられるけど、ほとんど本物との差は無いはずだ。

「どこからどこまでが義手なの」
「えーっと、このへん…」

袖を捲られてしまったから、二の腕あたりを指さすとそこも触られ観察される。未熟な二の腕を眺められるのはちょっと恥ずかしいんだけど。

「接合部なんか無いみたい…すごいね」
「涅隊長に造ってもらったの」
「へーぇ、ってことは死神になってから?もうそんな腕ぶっ飛ばすような任務にでも就かされたの?」
「いや、院生のときに……」

今日は特訓してもらう予定だったのに、なぜか左腕の話になってあの実習の日のこととか院生のときのこととか色んな話を聞き出されてしまった。特に隠すようなことは無いから全部話したけど、僕が女だってことは話さず済んだのでよかった。

「ちょっとだけ君のこと見直したよ」
「そう?」
「根性あるみたいだし、もうちょっと真面目に鍛えてあげるよ」
「…今まで不真面目にやってたの?」
「脳筋バカになったらもったいないと思って美容の方メインで考えてた」

バカ弓親!!!と言ってしまいたかったけど、せっかく真面目に鍛えてくれると言ってくれるんだからと我慢した。

「ひとまずの目標は、始解できるようにして僕を倒すことかな」
「弓親倒すのとかできる気がしないんだけど…」
「どうだろうね?君の上達ぶりを見ていると無理でもないと思うけど。まぁ美しさで僕に勝つのは無理だけど」
「そう言われると美しさの方で勝負したくなるよ!無理だけど!弓親より美しい奴なんかいないし」
「ふふ、ありがとう」

美しさで弓親を抜かせるとは思えないから、やっぱり強さで挑むしかない。早く強くなって、これから入隊してくる修兵とか他の後輩たちにも抜かされないように頑張らないと。

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