まつもと


「副隊長……これジュースじゃなくないですかぁ?」
「え?ボクにとってはジュースと変わらへんよ」

副隊長と晩御飯を食べに来ていたのだが、おすすめの美味しいジュースだとかいうことで出されたものを飲まされた。普通に美味しかったんだけど、なんだか体が熱くなってきて顔も熱くなってきた。京楽おじさんが飲んでるものを勝手に飲んだときと同じ感覚だった。

「なんでお酒飲ませるんですかぁ」
「飲ませたらどうなるかなぁ思って」
「意地悪……」

副隊長はにやにやしながら僕を眺める。意地悪してそうやってからかうところが気にくわない。

「これだから副隊長むかつくんだよー」

頭がぼーっとするけど、しょうがないからご飯の続きを食べ始めた。そしたら何やら副隊長の名前を呼びながら近寄ってくる女の人がいた。

「アンタが誰かといるなんて珍しいわね。相席していい?」
「ええよー」

その人は綺麗で乳がでかくてスタイルがよくて、輝いていた。

「めちゃくちゃ美人さんだね!?この人副隊長の知り合いなの!?副隊長ごときがこんなに美しくて綺麗で輝かしい女性とどこで出会ったの!?」
「ボクごときは琉魂街で乱菊と出会ったんやけど」
「お姉さん乱菊さんって言うんですか?お名前まで美しいですね!ていうか二人とも琉魂街出身なんですか?乱菊さんめちゃくちゃ綺麗ですね」

思ったことをどんどん口にしていたら副隊長に頭を抑えられた。

「なんすか副隊長。僕うるさいですか」
「そうよギン。私のことこんなに褒めてくれてるんだから黙らせることないじゃないの。名前何て言うの?」
「御門鈴です!五番隊で市丸副隊長にいじめられてる可哀想なしたっぱ死神です、よろしくお願いいたします!」

笑顔で乱菊さんの手をとって挨拶してみたんだけど、乱菊さんは首をかしげた。

「めちゃくちゃ可愛いけど男の子?それともただの僕っ子な女の子?」
「え、お、男の子ちゃうん?」
「はぁ?このかわいい僕が男の子に見えるとか副隊長四番隊のひとに診てもらった方がいいんじゃないですかぁ?」
「はぁ!?男の子言うたやん!?今まで嘘ついとったん!?」
「言ってませ〜〜ん、副隊長が勝手に僕のこと男の子だって思い込んでただけじゃ〜ん?一度も性別聞かれてないし嘘なんかついてないもーん」

副隊長の戸惑う姿が珍しくて面白くて、性別をばらしてみた。この数年間僕を男だと思い続けていただけあって驚いてくれていた。

「あ、藍染隊長は知っとったん?」
「はぁ〜?あたりまえじゃん。ていうか惣右介ほんと優しいよねー。僕の性別誰にも教えないでって言ったの本当に守ってくれてたんだね!嬉しい〜」
「なんでボクには教えてくれへんかったの」
「副隊長にだけじゃないよ。みんなに教えてないもん。ほんとのこと知ってるのなんて惣右介とかおじさんとか涅隊長周辺だけだよぉ」

こんな口の軽そうな意地悪副隊長なんかに教えたらみんなに知れ渡っちゃうじゃん。ていうか今教えちゃったからやばいかな。

「今教えてあげたんだから内緒にしてね、みんな知らないんだから」
「内緒にしなきゃいけない理由があるの?」
「僕強くなりたいんだよ。それで今まだ子供だからってただでさえ手加減されるのに、女だってわかったら更に手加減されちゃうでしょ。手加減ばっかされてたら特訓にならないもん」

男だと偽って弓親のスパルタ教育を受けていたら、体を痛めながらも強化されていくのを実感できた。女だとわかっていたら十一番隊の人たちは僕を相手にしてくれなかっただろう。

「馬鹿ねぇ。女であることを武器にすることだってできるのよ?」
「僕乱菊さんみたいな大人の色気も乳も美貌も持ち合わせてないんですけど」
「これからよ。今可愛いんだから成長が楽しみね」
「僕が女の子だったら成長したら好みの顔になるって副隊長に言われましたー」
「アンタこういう顔が好みだったの」
「え、だってかかわええやん」
「男の子だと思ってたのにそんな感想抱いてたとか気持ち悪いわ」

乱菊さんは残念そうな顔で副隊長を見ていた。ざまぁみろ副隊長。

「ギンに手出されたら私に言いなさいよ、しめてあげるから」
「わーい乱菊さん好きー!」
「ふふ、私も素直な子は好きよ」


それから僕は酔い潰れるまで乱菊さんとたくさんお話しをした。何を話したかなんて記憶に無かったけど、楽しかったことだけは翌日になっても覚えていた。

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