あばらい


「あれっ、あれあれあれっ、修兵!何してんのー?」

修兵が何かこそこそと人と話している姿を目撃した。修兵が話している相手はどこかで見たことがあって、邪魔してもあんまり怖くなさそうな人だったから話に割り込んでやった。

「御門先輩……あの、アレっす。今月の瀞霊廷通信の感想を、後輩に聞いてたんすよ」
「後輩?霊術院の?」

近くで見ると背が高い。修兵の後輩ということは、僕の後輩でもあるということだよね。そうだよね。

「五番隊の、阿散井恋次ッス」
「五番隊!」
「そういや恋次も五番隊だったな。この幼い奴は俺の先輩で恋次と同じ五番隊だ。まぁ御門先輩って呼んで媚びれば可愛がってくれるぞ」
「修兵嫌な言い方するー」

恋次のやつ、どこかで見たと思ったけど隊が同じなら見覚えあってもおかしくないな。真っ赤な髪色がめちゃくちゃかっこいい新入りがいる、と思ったことがあるような気がする。

「ていうか、なんでこんなにこそこそしてたの?瀞霊廷通信の感想って、修兵的にはお仕事じゃん。堂々とすればいいのに」
「それはほら、アレだよアレ」
「何アレって」
「いやー……」

修兵は何かを誤魔化しながら瀞霊廷通信を封筒にしまい始めた。なんかよくわかんないけど怪しさしか無くて、とりあえず修兵の腕を掴んで引いてみた。そのせいで、瀞霊廷通信は封筒に入らずに地面へと落ちたのだが、本の中に挟まれていた別の雑誌の姿が露になった。

「修兵……」

それはなんとも肌色成分の多い、美女が写る年齢制限付きの雑誌だった。少しの間沈黙が僕らを襲い、それを破ったのは本を拾う修兵だった。

「これだからこそこそしてたんだよ!わかったか!?」
「何逆ギレしてんの!?修兵不健全!!」
「男なんだからしゃーないだろ!?なぁ恋次!」
「俺に振るんすか!?やめてくださいよ!」
「彼女も居ねーんだからこれで我慢するしかねーんだよ!なぁ恋次!」

不健全だ。紙に写った女体なんか見て何がいいんだ。ここにこんなに美しい僕がいるってのに。それよりも写真で動かない美女の方がいいというのか。

「つーか、先輩こういうの興味無いんすか?」
「無い。修兵サイテー」
「なんでだよ。これだからお子様は」
「うるさいうるさい!どうせお子様だよ!!」

そんなえっちぃものに興味なんてあるものか。どうせ僕はお子様だ。そんなものより、強くなることにしか興味無い。

「邪魔して悪かったね!!!」

居心地が悪くて僕は急いでその場から離れた。修兵が男だなんてことは解っていたけど、あんなもの読むなんて知りたくなかった。




「檜佐木先輩……」
「んだよ。別にバレたってどうってことねーだろ」
「いやいや、御門先輩って女の子でしょう?興味無いのかとか普通聞きますか?」
「は?あいつ、男だぞ?」
「……あの可愛さでか!?」
「そうだ。だからエロ本見られたくらいで気にすんな」
「嘘だろ……かなり好みだったのに」
「この本の特集がか?」
「や、御門先輩が…」
「は?」
「え?」

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