げんせ


「現世!?行きたい!」

惣右介に軽く行きたいかと聞かれたからハイテンションで答えてみたのだが、どうやらそれは任務でだったらしく、ただ遊びに行くだけではなかったらしい。新人教育のために僕が新人を連れて現世へ行き、二週間ほどだが滞在することになってしまった。

「……よろしく」

五番隊に入った新人の、阿散井恋次と二人でだ。いつまでエロ本騒動を引きずればいいんだ。いい加減忘れさせてほしい。

「よろしくお願いします」
「…まぁ、仕事だからね。この間のことは、見なかったことにするから。えーっと、恋次?も、気にしなくていいからね」
「…おす」

惣右介も何を考えているんだか。なんで僕がエロ本を読むような男と二人で二週間も過ごさないといけないんだ。二週間もあったら、僕が女だってばれる機会は多いんじゃないのか。別にもう隠さなくていいわけだからばれたっていいんだけど、恋次にばれることで修兵にまで伝わってしまうなんてことになったら、ちょっと困る。

「主に魂葬やって、虚がいれば虚討伐…ってことらしいから、まぁ気楽にいこうよ」
「うっす」
「じゃ、行こうか」

穿界門を通って現世へと向かった。見慣れない景色が広がっていて、わくわくする。帰りに色々買って持ち帰ろう。
気づけば恋次が思ったよりも静かで、なんだかそわそわしているような気がする。初めての現世だからかな?それとも、あんまり話したことも無い僕と二人でだから緊張してるのかな。


「恋次?」
「はっ、はい!」
「緊張してる?」
「いやっ、そんな、緊張なんてするわけないじゃないすか!だってほら、あの、」
「突然エロ本買ってきたりとかしない限りは、僕は怒ったりしないし、基本的に優しいからね?普通にしててくれていいよ?慣れないとこだし緊張するのもわかるけど、何かあったら僕がなんとかするから任せてよね!」

にっこりと笑って恋次の背中を叩けば、どうやら肩の力は抜けたらしい。それでいい。

「とは言っても、虚が出なきゃやることもないんだけどねー」
「…御門さんって、強いんすか?」
「弱そうに見えるから、心配してくれてんの?」
「や、そういうわけではないっすけど」
「これでももう十年以上死神やってるし、虚討伐だっていっぱい経験してるし、恋次が心配するほど弱くはないよ。暇だし手合わせでもしてみる?」
「いや、いいっす。虚とやりあう前に体力減らす訳にもいかないんで」
「えー、つまんない」

早くどっかに虚出ないかな?恋次が戦うとこも見たいし、僕が強くてかっこいい姿も見せておきたいのに。伝令神機を見てみても、何の知らせもないし。こんな状態を二週間って、もしかしてめちゃくちゃたるい仕事なんじゃないだろうか。

「今日どこで寝ようね」
「あー、そういえば。飯もどうにかしなきゃならねぇっすよね」
「一応、藍染隊長にある程度の資金は貰ってるからご飯は義骸で買いに行けばいいよ。でもほら、現世のお土産買って帰りたいから余裕はもっておきたいし、宿はどうしよう。そのへんで野宿するかー、そのへんのホテル行くか」
「ほっ、ホテル…」
「ホテルがいいの?じゃあそうする?お土産とかそんな都合で恋次を野宿に付き合わせるにもいかないしね」
「えっ、でも、ホテル?二人で?」
「そりゃあ恋次がホテル泊まるなら、僕だけ野宿とか寂しいし、ついでに一緒に泊まるでしょ」

恋次からしたら、男二人でホテルだから別に問題無いよね?いや、むしろ男同士だからこそそんなところは嫌ということか?うーん、わからん。
でも待てよ、仮に野宿だとしたら、風呂はどうする。一日くらい入らなくてもいいけど、人と一緒となると入っておきたいし、でも野宿だと…銭湯か?女湯行ったらばれるし、男湯にはいけないし、どっちにしろアウト?ホテルにしておけば、部屋に一人用の風呂くらいついてるよね?

「あのー……俺は野宿でも、」
「よし恋次!ホテル行こう!」
「ええっ!?な、なんでですか!?俺がわざわざ野宿で良いって言ってるのに」
「僕にも色々事情があるの!それにほら、野宿なんかして寝てる間に虚来たら危ないし!ね!」
「そ、そうかもしれないっすけど、でもお金が…」
「藍染隊長太っ腹でいっぱいくれてるから大丈夫!それに安いホテルでいいんだから!」

恋次は困惑していたけど、ここは僕の意見を通させてもらった。別に恋次にとっても悪い話じゃあないんだからこのくらいのわがまま通しても構わないよね?

「よーし恋次、その前に仕事だ!虚出たから行くよー!」
「ちょ、御門さん速いっす!なんだその速度…」

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