よろしく


「しししし、昇格、って、」

珍しく惣右介に呼び出され、二人きりで真面目な話が始まった。僕を席官にする、というお話しだった。

「元々、学生の頃から君は優秀だったんだ。それがやっと始解もできるようになって才能が開花してきたとなれば、当たり前のことだろう?いつまでもただの死神として埋もれさせておくだなんて、もったいないよ」
「あっ、ありがとう!ございます!」

久々に真面目に褒められた。最近は見た目ばかり褒められていて、この感覚を忘れていた。僕は何よりも、実力を褒められることの方が嬉しかった。

「それで、配属先についてなんだけど」
「え?」
「…他のいくつかの隊から、君をぜひ率いれたいというお声を頂いているんだ」
「……でも、更木隊長はそんなこと言ってなかったでしょ」
「残念ながらね」

そうだと思った。前々から弓親に聞いてはいたから、解ってはいたことだ。十一番隊で戦うには、直接攻撃型の斬魄刀が基本だということを。鬼道型だと馬鹿にされるから、それが暗黙のルールになっている、ということを。だから、覚悟はしていたんだ。

「その代わり、三番隊、九番隊、十二番隊、十三番隊からのお誘いがある」
「十三!?えっ、い、いいの?」
「…十三番隊がいいかい?」
「や、えっと……待って待って」

浮竹おじさんが僕を認めてくれただなんて。いつも子供扱いしかされなかったけど、席官としての実力を認められたのは、最高に嬉しい。

「ど、どうしよう」
「僕としては、五番隊のままでいてほしいところだけどね」

十二番隊は嫌な予感しかしないし、三番隊はどうせ市丸隊長のわがままだろうし、ちゃんと僕を認めてくれたのは、惣右介と、浮竹おじさんと、九番隊長さんか。九番隊に行けば修兵と一緒に働けるけど、同じ隊にいると上下がはっきりしてしまうし、抜かされた時が怖い。十三番隊は浮竹おじさんだから楽しそうだけど、惣右介とも、離れたくないし。

「迷うから勝手に決めてくれてよかったのに……」
「そうすると、一番意志が強かった十二番隊にすることになってたんだが、それでもよかったかい?」
「それはちょっと…」

僕を絶望から救ってくれたのはたしかに十二番隊だ。だから十二番隊に入って恩を返すというのもアリだ。けど、本当に怖いから、正直なところ嫌だ。

「他の隊も気になるけど…五番隊にするよ」
「本当にそれでいいのかい?」
「いいよ。僕がいなくなったら、惣右介が寂しがっちゃうしね」

そう言ったら惣右介は困ったように笑って僕の頭を撫でた。否定しないってことは、今もそう思ってくれてるってことなんだよね?

「十一番隊行けなかったのは心残りだけど……あんまり気にすると惣右介に悪いし、これからはちゃんと、五番隊の席官として、五番隊のために頑張るね」
「あぁ。改めて、これからもよろしく」
「うん、よろしくお願いします!」

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