せきかん


「修兵ー!」

席官になってからしばらく忙しい日々が続き、仕事も覚えることも増えて他の隊の人たちに会いに行く暇がほとんど無くなってしまっていた。けど数週間経ってみれば席官の仕事にも慣れ、時間に余裕ができるようにもなった。

「ねぇ修兵、久しぶり!修兵に話したいこといっぱいあるんだ!」
「おせーよ。全部恋次に聞きました」
「え、そうなの?つまんない」
「それはこっちの台詞っすよ。俺が先に席官になってやるつもりだったのに先越されちまうし…」
「やーい、残念でしたー」

僕が自分で修兵に報告したかったのに、恋次の馬鹿。あとで叱っておこう。

「それで、褒めたり祝ったりしてくれないの?」
「……おめでとうございます」

修兵は不満そうな顔で祝ってくる。なんか面白くない。もっと喜んでくれてもいいのにさ。

「十一番隊に行けなかったのは残念だけど、僕の斬魄刀けっこう使えるんだよ」
「それも恋次に聞いた」
「…いいじゃん、僕にも話させてよー」

僕に越されて不機嫌になるのはわからんでもないけど、そんなにむすーっとされると僕も面白くない。

「…恋次が、先輩の話ばっかするんすよ」
「まぁ僕ってばかっこいい先輩だし憧れちゃうのも無理無いよね」
「そういうこと言いたいわけじゃねーよ」
「じゃあ何?……修兵、何怒ってるの?」

何が言いたいのかさっぱり解らない。わけもなくいらいらするなんて女の子か。いや、修兵男だし、理由が無いわけじゃないよな…。

「……悔しいんすよ」

何が?僕が先に席官になったことが?修兵だって優秀なんだからどうせすぐ追い越せるでしょ。頑張ればいいだけじゃないか。

「え、でもそれ恋次関係無くない?」
「うるせぇ」

ごちん、と久々に頭突きをくらった。相変わらず石頭だ。

「わかんねーならもういいっす。俺まだ仕事残ってるんで」
「えーっ、待ってよ!久しぶりに会ったのに修兵冷たいよ!なんで!?レンジでチンすれば温まる!?」
「恋次恋次うるせぇよ!俺も一昨日席官になったから忙しいんだよ!仕事に戻らせろ!」
「は、はああ!?悔しいとか言うくせに席官!?なってたの!?なんで早く言わないの!?おめでとう!すごいじゃん!」
「ありがとよ!!」

修兵まで席官になったなんて、それこそ悔しいじゃないか。僕と修兵は死神歴に何年も差があるのに、席官になれた時期がほぼ同じだなんて。やはり僕より修兵のが優秀で成長も早いということだろうか。悔しい。

「お仕事落ち着いたらさ、またゆっくりお話ししよ?一緒にご飯でも食べに行こうよ。お祝いも兼ねてさ!」
「…おう」
「忙しいとこ邪魔してごめんね?またね!」

このままじゃ本当に修兵に抜かされてしまいそうだ。今だって、どっちの実力が上かだってわからない。もしかしたらもう、修兵の方が強くなってしまったかもしれない。

「悔しい……」

僕の方が先輩なのに。

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