せいれいていつうしん


修兵も席官になったため、瀞霊廷通信の編集業務が増えたらしい。記事の執筆とか、新しいコーナー考えたりとか、大変らしい。だから、早々に僕を頼ってきた。

「とりあえず先輩も席官だから、記事にはなる!」
「とりあえずって何だよ失礼な」

依頼された内容は、写真撮影と簡単なインタビューだった。よく市丸隊長とかのそういうページがあったから、ああいう感じなんだろう。だけど、僕みたいな無名の席官が、そんな売り上げに関わりそうなページを頂いてしまっていいものなのだろうか。
なんて不安はあったけど、可愛い修兵に頭を下げられてしまっては、断れるわけもないんだけど。


「いくつか質問するから真面目に答えてくださいね」
「はいはい」
「じゃあまず手始めに、死神になった理由から」
「え。……かっこいい更木隊長に憧れて」
「……更木隊長には会えたんすか?」
「会ったよ。一段と怖くかっこよくなってたよ」
「…そっすか」

修兵はどこか納得いかないのか、それ以上詳しくは聞かずに、紙にペンを走らせた。

「休日の過ごし方は?」
「可愛い後輩とお食事したり、十一番隊の人とお稽古したり」
「可愛い後輩って?」
「何言ってんの?修兵じゃん。あとはまぁ、桃ちゃんとか恋次もかな」

ほとんど修兵だし、桃ちゃんは月一くらいでしかお食事行かないしね。

「恋人は?」
「いらない」
「いるかいないかを聞いたんすけど」
「いるって言ったら、どうする?」

冗談で聞いてみただけなのに、修兵はペンを落とした。何その反応は。まさか僕に恋人がいたらショックなのか?

「いらないなんて言われて、可哀想な恋人だな」
「冗談だよ、いないってば」
「じゃあ次。好きな異性のタイプは?」
「…そんな質問ばっかなの?」
「テンプレなんだよ、みんなに聞いてる。読者はこういうの好きみたいだから」
「ふーん……。好きなタイプねぇ。真面目で、可愛くて、でも強くて、あとかっこいい人かな」

修兵はメモをしてから、次の質問をなかなか出さずに何かを考え込んでいた。早くしてくれ。

「そんなハイスペックな条件に当てはまる人いるんすか?」
「別に誰かを思い浮かべて答えたわけじゃないからね?」
「そうなんすか?好きな子いないんすか」
「えー、いない……あ!修兵のことは好きだよ!」
「そんな恥ずかしいこと自分の記事に書けるか!」
「じゃあいい。一番好きなのは京楽隊長ですって書いといて」

最近おじさんとゆっくり話せてないなぁ。おじさんなら瀞霊廷通信読むだろうし、僕のところ読んで喜んでくれるかな。

「ずっと聞きたかったんすけど……先輩と京楽隊長って、どういう関係なんすか?」
「育ての親だよ。僕の父さんが、京楽おじさんの友達だったらしいんだけど、僕が小さい頃に両親とも仕事で死んじゃったんだってさ」
「…そっか」
「隠し子だって思われたらまずいから、最初っからおじさんって呼ばせてたみたい。でもね、おじさん優しいし、本当のお父さんみたいで嬉しいの。本当のお父さんがどんなもんなのかは記憶にないから知らないけどね」

僕が死神になれたのも、父さんがおじさんと友達だったおかげだし、おじさんが人の子供を世話してくれるくらい優しい人だったおかげだ。感謝してもしきれないくらいだ。

「さ、次の質問は?」
「…最近、楽しかったことは?」
「毎日楽しいよ」
「例えば?」
「お仕事も楽しいし、誰かとお食事するのも楽しいし、演習とか特訓も楽しいよ。こうやって修兵が構ってくれるだけでも楽しい」
「ふーん…」

ていうか修兵と一緒にいるだけで楽しい。このインタビューだって仕事の一つだけど、修兵と一緒だから余計に楽しい。

「写真ってどんなの撮るの?」
「先輩単独で大量に撮って、あとは先輩と仲良い人たちと一緒にもいくつか撮るつもりだから、誰にするか考えといてください」
「それ!更木隊長がいいって言ったら、一緒に撮ってくれる!?瀞霊廷通信に更木隊長が載る!?」
「い、や、更木隊長が、許可を出してくれたらな?」
「おっけー!やる気出てきた!僕のかっこいい姿いーっぱい写真にとってね!」

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