しげきてき


「しゅうへ……そこ、気持ちいいよ、んんっ」
「…先輩、声抑えてください」

虚討伐任務に駆り出され、席官として、他の隊員を引き連れての任務があった。席官になったことで責任を持たされることが増え、何かあるたびに身も心も疲れるようになった。仕事は好きだからいいんだけど、小さな任務でも大量にこなさなければならないとなると、負担はかかる。
今日も帰ってきて疲れて寝ようかと思って隊舎に向かって歩いていたら、偶然にも修兵に会って、一緒にご飯を食べ、ついでにお酒も飲まされ、僕の部屋まで送ってもらった。

「あっ、んぅ……」
「痛いならやめますけど…」
「やだ、もっと、痛いけど…気持ちいいから、やめないで」
「…こっちだって、疲れてるってのに」
「今は、仕事帰りの僕の方が、疲れてるの…。ちょっとくらい、いいでしょ」

ねだってみたら修兵はぶつぶつ文句を言いながらも僕の肩やら背中やらをほぐしてくれた。まだ若いはずなのに疲れはたまってしまっていて、体がこってしまっていた。

「痛たたたっ…」
「あ、すみません」
「…もっと」
「は?」
「痛いの、気持ちいいから、もっとやって…」
「……」

修兵は黙って強めの力で僕の背中を押してくれた。痛いけど気持ちいいとか自分でも訳がわからないけど、やめてほしくなかった。痛いせいで声が出そうになるけど、声は抑えろと何回も言われてしまったから、枕に顔を埋めて声を圧し殺した。

「結構きつくやってるんだけど、本当に気持ちいいんすか…?」
「うんっ……すっっごく、いいよ。くせになりそう…」
「……でも痛いんすよね?」
「うん、背中真っ赤になってそうなくらい痛い」
「…やっぱやめていいっすか」
「えっ、やだ、もっとやってくれないと」
「もう手が疲れた」

せっかく気持ちいいことしてたのに、修兵に限界がくるなんて。マッサージがこんなに気持ちいいなんて知らなかったし、またいつかやってもらおう。
でも、だからってここでもうバイバイなんてつまんないし、せっかくなんだしもうちょっと修兵と一緒にいたい。

「明日も仕事なんで、帰ります」
「まだ行っちゃだめ!」

立ち上がりかけた修兵を止めるため、ちょっと体を起こして修兵の服を引っ張れば、バランスを崩して僕の上に倒れてきた。一瞬でびっくりするくらいの距離に修兵の顔がきて、互いに目を丸くした。やっぱり修兵は近くで見てもかっこいい顔してて、見とれてしまう。
見つめあってぼーっとしていたら、ただでさえ近い顔を更に近付けてこられて、唇を唇で塞がれた。前に寝込みを襲ったときと違って、胸がドキドキした。僕の唇は食べ物ではないというのに甘噛みされたり舐められたりして、顔も熱くなって頭もぼーっとしてきた。苦しくて耐えきれなくて、修兵の胸を押した。

「しゅうへ……」

以前、僕が大人の姿に変えられてしまったあの時を思い出すような、熱っぽい目が僕に向けられていた。それも、あの時とは比べようがないほどに、真剣な目だった。
嬉しいはずなのになぜか胸が苦しくて、視界が滲んだ。

「あ……す、すみません」

修兵はなぜか謝って、急いで部屋から出ていった。
まだ一緒に居たかったのに。寂しくなって、目にたまった涙は零れ落ちた。

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