やくそく


悩んでいつもの調子でいられなくなるくらいなら、ぶち当たった方がマシだと思った。どうせいつか全てばれてしまうのだから、その時が今なのだと思えば良い。本当のことを言うのは怖いけど、修兵は優しいから、許してくれると信じて。

「修兵!」

今日も数人で行動していた修兵だけど、今日は遠慮せず呼び止めた。修兵は一緒にいた人に何か一言言ってから、僕の方へと来てくれた。

「どうしたんすか?」
「…次の休み、いつ?」
「えーっと……六日後っす」
「その日空いてる?」
「えぇ、まぁ」

じゃあ僕も、急だけど惣右介に頭下げてその日に休みずらしてもらおう。僕にとっては一大事なんだから、ちょっとくらい、わがまま言わせてほしい。

「じゃあ、その休み僕が貰うから、他の予定いれないで」
「いいっすけど……、あ、もしかして前に言ってた手合わせしたいとかいうやつっすか?随分と急だけど」

違う、今回は本当にただ話がしたかっただけだ。でも修兵と手合わせできるなら先にしたいし、手合わせする前に全部話しちゃったら、やりにくくなって手合わせなんかしてくれなくなりそうだし。

「…うん。だから、よろしくね」

ごめん弓親。僕はワガママだし臆病だから、大事なことは後回しでやりたいことからやってしまうよ。

「前日が夜まで忙しそうだから、その日昼からでもいいっすか?」
「いいよ。じゃあお昼ご飯食べたら集合しよっか」
「どこへ?」
「前に修兵置き去りにして風邪引かせたとこ」
「最悪な説明ありがとよ。了解」

あそこならきっと誰の邪魔も入らないし、二人きりになれるはずだ。
僕が負けてから本当のことを話すのは、負けた口実になるから絶対しない。でも話したいから、絶対に勝って、勝ってから全部話すんだ。

「楽しみにしてるから、約束守ってよ!」
「心配すんな。じゃ、また」

修兵は仲間のもとへと戻っていった。
最悪、今より関係が悪化する可能性があると思うと怖くなる。僕はただ修兵と仲良くしたいだけなのに、一つの嘘でここまで大変なことになってしまうなんて。
気分が重かったけど、僕もまた仕事に戻ることにした。

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