こうふく



「い"っ、た……」
「おい、大丈夫か…?」
「うーっ…」

修兵が息を切らしながら心配してくれるが、まともな返事なんてできる状態じゃなかった。
体を触られるたびに断片的にあのときの恐怖を思い出してびくびくしてしまうし、そのせいで挿れる前から泣いてしまって、何でもないと言って精一杯ごまかした。
男の体にもなったし、十一番隊で数人と入浴もしたから、少しは見慣れたはずだったのに、風呂で見るのと布団で見るのでは全くの別物のようにしか思えないし、それが今自分の体の中に埋まっているだなんて、信じられなかった。けど腹部の圧迫感は本物で、痛みも熱も、全部本物だった。

「悪い、無理させちまって…」

平気だと見栄を張りたかったが、言葉にすることもできず、僕はただ首を振った。
まともに喋れないなら行動でどうにか伝えなきゃと思い、修兵の顔を引き寄せてキスをした。そしたらお腹の圧迫感が強くなって、すぐに唇を離された。修兵は焦った様子でどうしたのかと思えば、一気にモノを引き抜いて、僕のお腹の上に白濁の液体をぶちまけた。熱くてどろっとしたそれは、さっきも見たからあんまり驚かなかった。

「あっぶね…」
「……しゅう、へ」
「…悪い、汚して」

修兵は罰の悪そうな顔で、それをティッシュで拭いとった。

「…修兵」
「ん?」
「……ありがと」

修兵の首に腕を絡めて抱き締めた。まだお互いに息も荒かったけど、少し落ち着くまでそのままひっついていた。
僕の様子のせいで不安だったろうけど、ちゃんと修兵と繋がることができた。最後までしてしまえば、トラウマだった出来事も、あの程度のこと、と割りきれてしまった。

「ねぇ、その、気持ちよかった?」
「…おう」

ちょっとだけ恥ずかしそうに、短く返事をしてくれた。こんな僕でも、修兵に尽くせてよかった。
腕を弛めて涙を拭い、修兵と目を合わせた。

「なぁ…本当に、よかったのか?なんか…体格のせいか、背徳感が…」
「今さら?そんなの、年下に欲情しちゃう修兵が悪いんだよ」
「んなこと言ったって、鈴が可愛いから…」
「……」
「…どうした?」

昔は可愛いって言われるたびに腹を立てていたというのに、不思議な気持ちだった。

「修兵に可愛いって言われるの、嬉しいかも」
「前は嫌がってたのに」
「今でも、かっこいいって言われるのは好きなんだけどね。でも、修兵の前では可愛い僕でありたいし、修兵の前でだけは可愛くしてたい」
「…鈴は昔から可愛いよ」
「それっていつから、」

聞きたかったのに、唇を塞がれた。話してる最中なのに、と怒りたくなるが、愛しそうに唇を啄まれて、怒りなんてすぐになくなってしまう。

「俺を守ってくれたあの日から…ずっとかっこいいと思ってたし、俺に泣くなとか言いながら泣く鈴が、本当に可愛かった」
「…素直に言われると照れ臭いね」
「あの時からずっと尊敬してたし、特別な存在だったんだ。鈴からしたら俺なんかただの後輩だったかもしれないけど…。女だってこと、隠しててくれてちょっと助かった。最初から女だって解ってたら、もっと前から惚れちまって、我慢なんかできなかったかもしれねぇ」

京楽おじさんの言う通り性別を隠したの、ちゃんと効果あったんだ。言うこと聞いておいてよかったかも。

「年の差なんて気にしないでよ…。成長は遅いけど、ちょっとずつ大人になるから」
「大人の体つきになるまで何十年かかるんだろうな」
「さぁ。…でも、幼い僕でも可愛くて欲情しちゃうんだから、成長なんて止まっちゃってもいいんじゃないかな」
「よくねぇよ、成長したら美人になるの解ってんだから」
「…そうだね、美人でおっぱい大きくなるもんね」

きっと修兵はそれを期待しているんだろう。今の僕じゃ物足りないのはわかるけど、ちょっとむかつく。このまま成長が止まればいいのに。

「別に、小さくても可愛いから気にすんなよ」
「ちょっ、なに触ってるの、」
「…まだ体力あるよな?」
「……え、修兵、あの、無くはないけど、」

勝手に僕の胸に触れたことで修兵のスイッチが入ってしまったようで、修兵の大きな手が僕の体を這った。

「嫌ならやめるけど、」
「…嫌、ではないけど」


僕が思っていた以上に修兵は僕を好きで、大事に思っていてくれたことが解ったんだ。だからこそ僕に無理のない程度に、僕を求めてくれるんだろう。そんな修兵にやめてとか嫌とか言えるわけないし、ていうか、思わないし。

「まだ痛いよな…でも、ごめん」

さっきよりは随分と楽だったが、痛くないわけではなかった。でもこの痛みも全部修兵が僕を好きだからこそ与えられるものだと思うと、少し嬉しくて、我慢もできた。

「少し、動くけど…やめてほしかったら、遠慮なく言ってくれよ…」
「う、んっ」

修兵は僕の腰を支えて、深く挿したそれをずるずると抜いたり挿したりしてなかを擦りつけた。まだ残る痛みもあるが、ぞくぞくして声が出そうになってしまう。僕が声を抑えても、いやらしい水音が耳につく。

「しゅうへ…」
「鈴……好きだ、」

修兵が動くたびに体が震え、自分がおかしくなっていくのを感じた。必死になって声を抑えていたのに、胸の先端を舐めたり吸われたりして、思わず声を漏らしてしまう。

「あんまり声出すと、他の部屋に聞こえるぞ?」
「それっ、修兵のせい……あ、んんっ」

自分の声も肌の触れ合う音も水音も全部がいやらしくて恥ずかしくて、でもやめられなくて思考がめちゃくちゃになりそうだった。修兵の体を抱き締めれば、少し角度が変わったせいなのか、身体中をぞくぞくとした感覚に襲われて、修兵に強くしがみついてしまった。

「そんな、締め付けられたら……っ」

どくどくと体の中に熱いものを注がれた。その感覚がなんだか気持ちよく感じてしまって、力が抜けた。

「修兵の、あったかい…」
「ごめん、ほんとごめん……」
「…なんで謝るの?」
「なんでって……だって、……子供できたら、困るだろ」
「……子供?」
「……おい、まさか子作りの仕組み理解してないとか言わないよな」
「…」
「おい!」

修兵はため息をついて僕の体を抱き締めた。

「鈴のこと孕ませたら京楽隊長に何を言われるか……」
「しゅ、修兵……だめ、そこ、すごい、ぞくぞくするよぉ…」
「……ここか?」
「あっっ、ぅ……」

口を開けば声を出してしまうと思い、うなづいて修兵にまた抱き付いた。一度落ち着いたはずなのに修兵のそれはまた大きくなってきていて、僕の反応が強くなるところを刺激し始めた。

「しゅうへ、好き、好き…」
「俺も好きだ、鈴っ……」

大好きな修兵と繋がれることが嬉しすぎて、自分が夜更かししていることまで気付かずに行為を続けてしまった。

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