比翼連理


「それでさー、この前さー、」

今日も仕事をさぼる京楽隊長を隊首室に軟禁して仕事をさせていたのだけれど、鈴さんが来てしまったので特別に休憩をとらせてあげることにした。
鈴さんが席官になってからというもの、忙しくなったせいなのかあまり八番隊舎まで来なくなっていた。だからこうしてたまに来てもらえた時には、京楽隊長が叱られるみっともない姿を見せないためにも、仕事の中断を許していた。鈴さんがいる時にまで仕事をしろだなんて叱っていたら、鈴さんが遠慮して来なくなるかもしれないと思ったからだ。

「でねー、僕がリーダーで、新人連れて任務行ったりしてるの。すごいでしょ、成長してるでしょ?」
「そうだねぇ、さすが鈴ちゃん。偉いねぇ」
「えへへへへ」

京楽隊長はでれでれしながら鈴さんを馬鹿みたいに褒めまくっておだてて頭を撫でる。育てていた子がいつまでもなついていてくれるのが嬉しいのは見ていればわかる。鈴さんも褒められて延びる子だったのが幸いだ。

「しかもねー、僕みたいにかっこよくて強い死神になる!って言ってくれる子とかもいてね、すーっごい嬉しいの!だからー、もっと強くなってー、卍解もできるようになってー、鬼道もいっぱい覚えてー、おじさんと共闘できるくらい強くなるね!」
「あはは、頼もしいね」
「僕本気なんだからね!」
「うん、応援するよ。だから、死んじゃだめだよ」
「まだまだ死なないよ。僕まだ更木隊長に勝ててないし」
「更木隊長に勝ったら鈴ちゃんのこと剣八ちゃんって呼ばなきゃならないのかな?それは嫌だねぇ」
「…おじさんにもらった名前使えなくなっちゃうね。やめとこ」

心配しなくても更木隊長に勝てるほどの強さを手に入れるのは至難の技だと思う。

「それに十一番隊の隊長になんかなっちゃったら、可愛い鈴ちゃんの身が危険だよ。柄の悪い男がいっぱいいるし」

女好きの京楽隊長が言えることでもないけど。
それに京楽隊長は知らないのだろうか。鈴さんが十一番隊長になろうがなるまいが、既に男の影があるということを。
私はほぼ毎週会っているから話をよく聞くのだけれど、最近なんだか同じ男の話ばかりしていて、それがどうものろけ話のように聞こえている。それにその話をする鈴さんの表情が、最高に女らしく、幸せそうだった。

「強くなったらそれ全員蹴散らせられるね!」
「そうだね、どんどん強くなろうか」

鈴さんが強くなれば弱い男は確かに寄ってこないだろうけど、彼氏であろうその男は、鈴さんに負けないように強くなっていくだろう。強くなるため二人で支え合っていれば、仲も深まってしまうだろうし。

「そうだ七緒ちゃん、今度鬼道の特訓付き合って!」
「えぇ、いいですよ」
「ありがとー!」

きっと鈴さんが女として生きる道をちゃんと選んだのも、その男性のおかげなのだろう。
京楽隊長が泣いてしまうから、鈴さんがのろけ話をするなんてこと、言わないでおいてあげましょう。

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