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「もっとオシャレなお店がよかったですか?」
「いや、構わないよ」

快復祝いなんて言ったけど、幸実ちゃんは特に食べたいものもないらしく、僕も正直どこでもよかったから、適当に行き付けの居酒屋に入ることになった。
幸実ちゃんは僕に気を使って、本当にここでいいんですか!?なんて聞いてきたけど、別に食べ物の見た目には重きを置いていない。僕がもし瀞霊廷生まれ瀞霊廷育ちの貴族の死神だったらオシャレなお店がいいとかわがままを言ったかもしれないが、琉魂街の荒んだ食生活を思えば居酒屋でも満足できる。まぁ、たまには高いところでご馳走も食べたくなるけどね。


「僕と二人で食事するのに抵抗無かったの?」
「へ、なんでですか?そりゃあ、ちょっと緊張したりもしますけど…全然、嫌じゃないですし」
「…檜佐木副隊長にご飯誘われたけど二人じゃ行きたくない、って、前騒いでただろ」
「…騒いでましたっけ?でもそれは、その、仲良く無い人と二人で、ってのが、気まずくて困ってしまうからであって…。弓親さんなら、いいかなって思って…」

学院時代の先輩というと長年の付き合いがありそうなのに、そいつよりも知り合ってからの期間が短い僕のほうがなつかれているなんて。完全に脈無しな檜佐木副隊長を気の毒に思うよ。

「弓親さんこそ、よかったんですか?私なんかの食事シーン見て、お目汚しになったりしてません?不愉快な食べ方してたら言ってくださいね?」
「謙虚すぎて不愉快だ」
「…性格について言われると、ちょっと傷付くんですけど…」
「君のことが嫌いで言うわけじゃないんだからいちいち傷付かないで。ただ、もっと堂々としてた方が美しいって言いたいだけだ」
「だ、だったら最初からそう言ってください!不愉快とか言われるから何事かと…」

幸実ちゃんは弱気になりながらお酒を飲んだ。そういう弱気なところがダメだって言ってるのに。

「弓親さんみたいに美しかったら、堂々とできるんですけどね…」
「君は美しいよ」
「…お世辞はいいです」
「僕は事実しか言わないよ」
「…嘘つき」

幸実ちゃんはなんだか酒を飲むペースが早い。そんな風だとすぐ酔ってしまいそうだけど、大丈夫なのか。

「ちょっとだけ、愚痴聞いてもらってもいいですか?」
「いいよ」
「私が醜いこと言ったら醜いってちゃんと言ってくださいね?」
「うん」

3杯目のグラスを飲み干して、頬を赤く染めながら幸実ちゃんは語り始めた。

「私最近、よく十一番隊に遊びに行ってたじゃないですか。私の隊の女の子たちが、それを私が男漁りに行ってるものだと思ってたみたいで。心外じゃないですか?私暇だから恋次くんにちょっかいかけたりみんなと真面目に特訓とかしてたのに」
「そうだね。誤解は解いた?」
「解きました。でも、私怪我して帰ってきたじゃないですか。おかげでやっぱり本当は特訓なんかしてなかったんじゃないかとか言われてて、私これでも特訓頑張ってきたし、任務だって真面目にやったのに、ひどくないですか?」
「…ひどいね」

幸実ちゃんが頑張っていたのは、近くで見ていたからよくわかる。それを、何も知らない奴らが否定するのは、僕も腹が立つ。

「私今まで浮いた話とか無かったから、ちょっと男の多い十一番隊と関わったからってそんなこと言われて…。好きな人できた?とか、彼氏できた?とか、ハーレム楽しんでるの?とか色々言われて…。私、真面目に強くなりたいのに、そういうこと言われるの嫌で、十一番隊行くのやめたくなって…」
「それはダメだよ」

幸実ちゃんが来てくれないなんて、そんなのは嫌だ。

「他人の言うことなんか聞いてどうするんだ。君の一番やりたいことは何? 強くなることだろう? だったら、そんなくだらない戯言を気にする必要は無い」
「…弓親さんは、意志がはっきりしててかっこいいですね。私もそのくらい強い意志を持ちたいです」
「そう思うなら、周りの意見に振り回されないくらいにはなってよ」
「そうですね。振り回されるとか美しくないですよね。もっと頑張って強くなって、今度こそ無傷で任務遂行して、みんなのこと見返してやればいいんですよね」

また運ばれてきたお酒をごくごくと飲む。
頑張りやさんで礼儀正しいいい子かと思ってたけど、それなりの悩みも持っているものだ。酒の勢いで見返してやるとか言ってるけど、酔ってるみたいだしこれが本心なのかな。

「それができたら今度こそ席官になれたりしますかね〜へへへ」
「始解ができたらね」
「そうですよね〜…始解できないから、恋次くんや桃ちゃんたちに置いてかれるんですよね…」
「ほら、元気だして。落ち込んだ顔なんて似合わないよ」

串を持って焼き鳥を幸実ちゃんの口の前に突きだした。するとそれを素直に食べて、美味しかったのか笑顔になった。

「美味しい!弓親さんも、どーぞ!」

満面の笑みで、幸実ちゃんはネギマを僕の口の前にやった。だが酔っているせいか手が震えていたから、幸実ちゃんの手を包むように握って、そのネギマを食べた。

「弓親さんの手って意外と男らしいんですね。なんだかドキドキしちゃいました」

はにかみながらそう言われ、むせた。この僕が動揺させられてしまうだなんて。

「大丈夫ですか? お水飲みます?」

そう言いながら差し出してくるのは水ではなくお酒だし、どうやらその程度の区別もつかないらしい。

「…もういい、大丈夫だから」
「それはよかったです。落ち着いたなら残りも食べましょうね、あーん」

またしても笑顔でネギマを僕の前に突きだしてくる。もしや最後まで食べきるまで続くわけじゃないだろうな。

「僕にこんなことして、明日になって後悔しても知らないよ」
「こんなに楽しいのに後悔なんてするわけないじゃないですか」
「…そう。まぁ、僕も楽しいからいいけど」

いつも節度を持った行動をしているのに、こんなことされると調子が狂う。いつもの幸実ちゃんはどこへいってしまったんだ。

「明日も仕事なんだから程々にね」
「私は明日お休みの日なので大丈夫です〜〜。朝から十一番隊遊びに行きますね!」
「それだけ飲んでたら朝なんて起きれないだろ」

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