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「ゆ、弓親さん!」

幸実ちゃんの震える声で名前を呼ばれた気がして目が覚めた。目を開いても僕の部屋だし、彼女の声が聞こえるはずもない。

「夢か…」
「弓親さん!」

聞き間違いだと思ったのに、まだ彼女の声が聞こえてくる。ふと声のした方に顔を向けてみると、僕の腕の中に女の子がいた。

「…幸実ちゃん」
「お、おはようございます。なんで私は、こんなことになっているのでしょうか…」

昨日はたしか、幸実ちゃんが酔い潰れてまともに歩けなかったんだ。部屋まで送ろうかとも思ったけど、僕は幸実ちゃんの部屋を知らないし、部屋までのまともな案内もできそうな状態じゃなかったし、諦めて僕の部屋まで連れてきたんだ。

「覚えてないのかい?」
「ご…ごめんなさい、途中から全然記憶なくて…。私、何か変なことしませんでした?大丈夫でした?」
「別に、迷惑なことはされてないよ」

不安そうな声を出すものだから、安心させるために頭を優しく撫でてあげた。
食べ物をどんどん口に入れられたことも、酔い潰れたことも、ここまで運んだことも、別に迷惑ではない。幸実ちゃんの知らない面を見れたような気がして楽しかったくらいだ。

「あの…なんで、一緒のお布団で、寝てるのでしょうか」
「僕の部屋、布団一式しか無いし」
「そ、そういう問題なのでしょうか」
「嫌だった?」
「全然、い、嫌では、ないですけど…」

恥ずかしいとかそういうことかな。腕を緩めて解放してみれば、幸実ちゃんが顔を真っ赤にさせていることが解った。

「君には刺激が強すぎたかな」

頬に触れてみれば更に顔を赤くして、耐えられなかったのかガバッと勢いよく起き上がった。

「すみません…色々、ありがとうございました。ただ、あの、ごめんなさい、しばらく弓親さんの顔見れそうにないです」
「え」

からかいすぎたのだろうか。「失礼します!」と言って慌ただしく部屋から出ていった。
嫌われたかな。好きでもない男に部屋に連れ込まれて密着されるなんて、嫌だったかな。

「…馬鹿だな」

抱き締めたりなんかするんじゃなかった。いつもの距離感で、充分だったのに。

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