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「だから、嫌だって言ってるじゃないですか」
「いいじゃんか、一回くらい。遊んでも怒るような彼氏がいるわけでもねぇんだろ?」
「そういう問題じゃないです」
話し声が聞こえてきたから物陰からそっと覗いてみれば、幸実ちゃんが十一番隊の馬鹿数人に声をかけられていた。どうやらこの前阿散井が言っていたことは事実だったらしい。
「一緒にご飯行くだけでもいいからさぁ」
「…特訓に付き合って頂いてることには感謝しています。けど、ごめんなさい」
「何がそんなに嫌なんだよ」
「…そうやって、嫌だって言ってるのに無理やり迫ってくるところがです」
「ああん?」
幸実ちゃんは強気な姿勢を崩さないようにはしているが少し怯えているようにも見えて、助けなきゃと思って僕は彼らに近付いた。
「ねぇ、ブサイクがいつまで女の子にしつこく迫ってるの?醜いから道開けてくれる?」
「あぁ!?…あ、綾瀬川五席じゃないすか…」
「ご、ご機嫌うるわしゅう」
「女の子にしつこくすると嫌われるよ」
見せ付けるように幸実ちゃんの手を握り、その場を離れた。ずるいことをしてごめん。だけどこうすればあいつらも勘違いして君に手出しできないだろう。
「ゆ、弓親さん!あの、ありがとうございます」
「ん?あぁ…ごめん。大丈夫だった?」
イライラしてだいぶ歩いたような気もする。声をかけられてやっと手を離した。
「助かりました。あの人たち、断ってもしつこくて…」
「ああいうの、前からあったの?」
「…えぇ、まぁ」
「ごめんね、気付けなくて。注意して見とくべきだったよ」
「いえ、そんな、私がきっぱり断れないのがいけないので…」
きっぱりごめんなさいって言ってたはずなんだけどね。あいつらがしつこいのが悪い。
「手なんか繋いじゃったから、変な勘違いされちゃったかもね。まぁ、それならそれで幸実ちゃんが十一番隊の馬鹿たちにちょっかいかけられたりすることも減るだろうけど」
「…すみません、ご迷惑かけます」
「僕は別に構わないけど。…変な噂立ったら、幸実ちゃんにも迷惑かけちゃうね」
「…私も、別に構わないですよ。それで誘いが無くなるなら、楽ですし」
まぁそうだよね。何回もされていたナンパが無くなるなら、僕との噂が立つくらいお安いもんだろう。
「…あ、あの、弓親さんお昼ご飯食べました?」
「まだだけど…」
「よければ、ご一緒しませんか?」
「…そのためにここまで来てくれたの?」
「そ、そうですけど」
僕のためにねぇ。嬉しいじゃないか。
「奢るよ」
「えっ、そんな、奢ってもらうつもりで来たわけじゃなくて、」
「気分が良いから出すって言ってるの。何食べたい?」
「え、な、何でもいいです。お蕎麦とかで…」
「じゃあそうしよう」
仲良くない奴らとはどんなにしつこくされても出掛けない幸実ちゃんが、この僕に自分から会いに来て誘ってくれているんだ。嬉しくないわけがない。
「あの…最近何か良いことでもあったんですか?」
「…あぁ、最近は毎日楽しいことだらけだ」
ただ君が会いに来てくれて、弓親さんと名前を呼んでくれて。ただそれだけで毎日が楽しみで仕方がない。
そう素直に言えたら、どれだけ楽になることか。
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