今日もあの子はやってきた。だけど今日は、阿散井は任務に出向いていて留守なんだよ。

「阿散井に用かい?」

練習場を覗いてキョロキョロしていたから、声をかけてあげた。いつも遠くから見るだけだったけど、近くで見ても阿散井にはもったいないくらい可愛い子だった。

「あ、はい。大した用じゃないんですけど…その…」

どうかしたのか、喋っている内にどんどん声が小さく消え失せていった。口を開けたまま固まっているから「何?」と尋ねた。

「…十一番隊に、こんなに綺麗な人が居たんですね」

どうやら僕に見とれていたらしい。僕のことを正しい評価ができるなんて、良い子じゃないか。

「いつも恋次くんくらいしか見てないんで気付かなかったです」

なんて余計なことを言われたけど、聞かなかったことにしよう。

「君、よく来るけど何番隊の子?」
「すみません、申し遅れました。八番隊の夏目幸実と申します」

八番隊だから暇なのか。あそこは隊長があの人だから、女の子に優しくて厳しい任務を与えないという話を聞くし。

「僕は十一番隊五席、綾瀬川弓親。よろしくね、幸実ちゃん」
「は、はい。よろしくお願いします」

右手を差し出し握手を求めれば、ぎこちなくその手を握られた。

「ところで、その、恋次くんはどこへ?」
「あぁ、阿散井なら今日は居ないよ。任務中だ」
「そうなんですか…せっかく差し入れ持ってきたのに。綾瀬川さん、よかったら食べますか?」

幸実ちゃんが後ろ手に持っていた紙袋には、たい焼きの絵が描かれていた。

「名前、弓親でいいよ。あとそれ、ぜひ頂くよ」
「あ…はい。五つ入ってるので、他の方にわけてもらっても大丈夫なので…」
「ねぇみんな!幸実ちゃんが差し入れ持ってきたよ!」

十一番隊の危なさを少しだけ知ってもらおうと思い、特訓中のやつらに声をかけた。そしたら餓えた獣のように「俺にください!!」「いや、俺に!!」「御慈悲を!!」なんて吠えながら群がってきた。
幸実ちゃんは驚いていたけど、これが本来の十一番隊だ。女の子一人で来るのは危ないんだよ。

- 2 -

←前次→