「恋次くーん」

2週間ぶりに幸実ちゃんがやってきた。そして思惑通り、うちの隊員たちは「幸実ちゃんだ!」「おはよう!」「幸実ちゃーん!!」などと口々に騒ぎだした。一番驚いていたのは阿散井だった。

「な、なんだぁ?お前いつの間にみんなと仲良くなったんだよ」
「恋次くんが居なかったときに…」
「おはよう幸実ちゃん」
「あっ、おはようございます弓親さん」

阿散井の驚く顔が面白くて、ついでに幸実ちゃんの頭を撫でてみた。髪の毛が思ったより柔らかくて、僕まで驚かされた。

「ごめんね阿散井。幸実ちゃんがみんなと仲良くなっちゃった」
「別に良いっすけど…」

阿散井は幸実ちゃんをちらっと見るが、頭を撫でたせいなのか幸実ちゃんは頬を染めて固まっていた。

「…お前大丈夫か?」
「う、うん」

大丈夫か?って、何が?男にちやほやされることが?それとも、僕のせい?頭撫でちゃいけなかった?

「あ、ごめんなさい。嫌なわけじゃないんですよ?ただ、こう、ちやほやされるの、慣れなくて…」
「そうなの?幸実ちゃん可愛いからモテそうなのに」
「えっ、そ、そんなこと全然無いです!モテてたら今ごろ恋次くんじゃなくて彼氏と遊んでますって」
「じゃあ阿散井のこと彼氏にすれば?」

からかうように言ってみれば、隊員たちにも聞こえていたのか、僕ではなく阿散井を睨み付けた。そして幸実ちゃんと阿散井は顔を見合せ、お互いに微妙な顔をした。

「ご、ごめん恋次くん…タイプじゃない」
「悪いな、俺もだ」

皆がほっとしたと同時に、やはり阿散井に敵意を向けた。贅沢を言う阿散井に腹が立つのだろう。

「恋次くんは…私のこと女の子扱いしてこないんで、一緒にいて楽なんですよ。八番隊って女性が多めだからきゃぴきゃぴしてて、周りに合わせて女の子っぽくしてないと浮いちゃうんです。だから、疲れたら恋次くんの邪魔してストレス発散してるんです」
「ストレス発散のためなんかにわざわざこんなとこまでご苦労なこった」
「…だって京楽隊長、女の子にあんまり仕事回さないから、暇なんだもん」
「仕事欲しいんだ?体動かすの好きなの?」
「好きですよ。ここに混ざって私も特訓したいくらいです」
「それはよかった。じゃあちょっと、阿散井と手合わせしてみてよ。幸実ちゃんの力がどんなもんなのか、見せて欲しいな」

軽い気持ちで言ってみれば、幸実ちゃんは嬉しそうに笑った。対照的に、阿散井は嫌そうな顔をしてまた隊員たちに睨まれていた。

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