可愛くありたい


「聞いてよ恋次くん!」
「だから聞いてるって!!」

今日のお昼偶然檜佐木さんに会って偶然ご飯に誘われて幸せな時間を過ごしたの!いっぱい食べる檜佐木さんがワイルドで!太らせて終いには私が檜佐木さんを食べてしまいたい!
なんて話を恋次くんに何度か話した気がする。でも気がするだけで気のせいかもしれない。もう一度くらい聞いてくれないかな?

「お前な、幸せなのは解ったから、呑むのそのへんでやめとけ?明日動けなくても知らねぇぞ」
「私が動けなかったらきっと白馬の王子様が助けてくれるもの」
「何言ってんだか…あの人、白馬の似合うような顔してねぇだろ」
「じゃあ何が似合うの?」
「…三角木馬」
「なぁにそれ?」

本当は今日は桃ちゃんも誘っていたし、晩御飯はちゃんと一緒に食べたんだけど、明日も早いから、という理由で帰ってしまっていた。イヅルくんだって誘ったけど、三番隊長さんが仕事をさぼるせいで連日の疲れがたまっていて、出歩ける元気が無いとかで断られてしまった。

「べつにね、あの人に白馬が似合わないなら、それでいいの。私だけの白馬の王子様になってくれれば、いいんだけど、なってくれないから…馬は…馬刺にして…王子も丸焼きにして…酒のつまみに、」
「まてまてまて、もう頭限界だな?そろそろ帰ろうぜ」
「えー、お腹空いた。馬刺食べるー」
「馬刺はねぇよ。つーかどんだけ食うんだ。枝豆でも食っとけ」
「つまんない…」

つまんないけど枝豆が余っていたから食べ始めれば、恋次くんに水を差し出された。まだお酒のみたいのに。

「星野は相変わらずよく食うな」

なんて大好きな低い声が聞こえるのも、お酒のせいで幻聴が聞こえただけだろう。そろそろ帰った方がいいのかな。

「隣いいか?」
「…檜佐木さんの幻覚」
「幻覚じゃなくて生身だけど」

檜佐木さんは私の横に座りながら、私の頬をつまんできた。大好きすぎて見えた幻覚だと思ったのに、さわれているということは本物なのだろう。

「檜佐木さん…」
「何だ?」

昼も夜も檜佐木さんに会えるなんて。そして喋れるなんて。やっぱり今日の私はついている。

「恋次くんが檜佐木さんには三角木馬が似合うって言ってたんですけど、三角木馬ってなんですか?」

素直に聞いてみたら、檜佐木さんの笑顔がひきつって、恋次くんのことを睨み付けた。

「お前な、どういうつもりで言ったか知らねぇが、ほんとどういうつもりだ、ふざけてんのか」
「そういうのも好きかなぁと思いまして」
「俺は至ってノーマルだ。そんな危ない趣味はねぇよ」
「ねー、檜佐木さん、今私が檜佐木さんに話しかけたのになんで私じゃなくて恋次くんとお喋りするの?」
「え?あ、悪い。恋次が変な冗談言うからつい」
「二人にしか解んない会話しないでよー、寂しいよ?私にも解るように教えてよー」

恋次くんはずるい。ちょっと檜佐木さんと仲良いからって、私よりも檜佐木さんと喋っちゃって。私が男だったらもっと檜佐木さんと仲良くお喋りできたのかなぁ、なんて思うけど、男だったらこんなに楽しい恋をすることもなかったのかな、というジレンマ。

「恋次のことはもういいだろ。ほら、次何飲む?カクテルか?」
「かしすおれんじとー、唐揚げとー、お茶漬けとー、」
「檜佐木さん、そろそろ星野でも胃の限界来ると思うんで、もう水以外与えない方がいいっす」
「あぁ?俺が来る前にどんだけ呑ませたんだよ」
「星野が勝手にビールとか焼酎とかどんどん追加してたんすよ」
「ちょっと恋次くん!私がせっかく可愛い子ぶってカクテル頼んでるんだから焼酎とか言わないでよ!!」
「怒るなよ、星野は焼酎飲んでても可愛いから」
「聞いた恋次くん!?私可愛いって!!」
「あ〜〜よかったな」
「すみませーん!!焼酎ロックくださいな!」
「おいっ!」

檜佐木さんに可愛いって言われちゃった。ほんとに現実だよね?夢でも幻聴でもないんだよね?
私はもう何があったって、今の檜佐木さんの言葉を忘れないんだから!

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