友人は心配性


「…朝?」

私は桃ちゃんと恋次くんとご飯を食べていた。そして桃ちゃんはお酒はちょっと、ということで先に帰った。そこまでは明確に覚えている。そのあと恋次くんと二人でお酒を飲んでいたことも覚えている。
なんとなく覚えているけど、ここまで帰ってきた記憶がない。体は少し汗ばんでいて、きっと酔ったままシャワーも浴びずに寝落ちたのだろう。ひとまず着替えを出して、シャワーを浴びることにした。

「うーーーん」

なんだか昨日とても幸せだった気がするけど、思い出せない。幸せってことは檜佐木さんが絡んでいるのかな、なんて思うけど昨日は恋次くんと飲んでいたのだから檜佐木さんは関係無いのだろう。

身支度を整えて仕事に向かおうと歩いていたら、前方から恋次くんがやってきた。

「おはよう恋次くん」
「おい、昨夜大丈夫だったか?」
「なにが?」
「…何か、変なことされなかったか?大丈夫か?」
「え?何?誰に?何焦ってるの?」

恋次くんが余りにも神妙そうな顔をするから、少し焦る。私は誰かに変なことをされた記憶がない。というか昨夜の記憶がない。

「檜佐木さんだよ。俺も酔ってたからつい任せちまったけどよ…」
「…檜佐木さん?が、何?」
「…は?いや、昨日一緒に飲んだだろ。まさか覚えてないのか?」

そんなまさか、私が檜佐木さんのことを忘れるだなんて。いや、でもこの幸福感はやはり檜佐木さんに与えられたものだったのか?そう考えれば辻褄があう。

「なら一言謝っとけよ?昨日檜佐木さんに全然敬語使ってなかったし」
「誰が?」
「お前だよ」

記憶が飛ぶくらい酔っていたからといって、檜佐木さんにため口をきくとは。それが本当なら私の記憶力もやばい。

「檜佐木さん、俺が星野を送るから…っつって部屋まで送ったはずだけど。本当に大丈夫か?俺も頭回ってなかったから任せちまったけど…何か、異変とか無いよな?」
「異変って何…別に起きたらいつも通り布団で寝てたよ。ていうか、檜佐木さんが変なことなんてするわけないでしょ」
「檜佐木さんだから心配してんだよ」
「うわ、恋次くん失礼だ」

だって恋次くんの言う変なことって、送り狼的なあれでしょ? そんなことされてないし。いや、覚えてないけど。べべべ、別に、服が乱れてたとか、そういうことも無かったし、何もされてないはずだ。

「…とりあえず、檜佐木さんに声かけとけよ」
「そうだね…迷惑かけちゃったみたいだし」

生意気な口聞いてごめんなさい、ってことと、部屋まで送ってくれてありがとうございます、ってこと。迷惑かけたことは本当に申し訳無いけど、そのおかげでまた檜佐木さんに会いに行く口実ができてしまったと喜ぶ私がいた。

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