本当の言葉
「阿近さんはどう思います?」
「どうでもいいと思う」
私の周りでそういう話をできそうな大人の男である阿近さんに相談を持ちかけた。それなのに、返ってきたのは非情な答えだった。
「真面目に聞いてくださいよ!私の初恋がかかってるんですよ!?」
「知るかよ。酔った勢いで手出されたってだけの話だろ?つーか好きな男に触られて何怒ってんだ。嫌だったのか?」
「だから、覚えてないんですってば!自分に対して怒ってるんです!」
「それこそ知らねぇよ」
「もー!」
阿近さんってば真面目に聞いてくれないけどほんとは女性経験無いのかな? 角生えてるし女の子にびびられててもおかしくないよね。
「阿近さんだったら、どうです?酔った勢いで女の子に触りまくって、翌日その子に忘れてくれって言うとしたら、そのときどんな気持ちで言います?」
「んなの一夜の関係で終わらせたいだけで彼女面されたら困るからに決まってんだろ」
阿近さんの口からとてもひどい答えを聞いてしまった。そうか、じゃあ檜佐木さんも私に彼女面されたくないから忘れろなんて言ったのか。一夜の関係という程のことはされてないけど、いちゃいちゃべたべた触りまくったのは事実らしいし。
「…これからまた会いに行ったら迷惑ってことになるんですかね?」
「仕事上の付き合いなら問題無いんじゃねぇ?まだ会いたいのか」
「…解んないです。あの人が、そういう人だなんて全然思ってなかったし、このまま好きでいていいんですかね」
「そいつが本当にそういう奴だったのか、確かめてみるか?」
「どうやって?」
「新薬」
「え」
自白剤でも盛られているものなのだろうか。阿近さんは可愛くラッピングされたクッキーを引き出しから取り出した。
「一枚食うだけでイチコロだ」
「…これを、食べさせたらどうにかなるんですか?」
「お前が聞きたい答えを本人から聞き出せるぞ」
忘れろだなんて言った檜佐木さんの本音を、聞けるのだったらもう一度会いに行こう。
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