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「傑、お前これ食べてみろよ」
「やだよ、どうせ酸っぱいんだろ」
「言うほどだって、そんな酸っぱくねーから」
「ならまず自分で食べてみな」

小学生男児のようなやり取りをしている同級生を横目に、届いているメールの返信をチェックする。メールの相手は中学から付き合っている彼氏だ。

中学3年の時に告白されて、まあまあ顔も自分好みで、特別断る理由もなかったので付き合うことにした。その流れで今も交際は続いているけど、もうそろそろ潮時かもしれない。彼からのしつこいほどのメールは最近度を超えてきている。

多忙な身の自分にそれに逐一返せるはずもなく、放置状態になっていった。もともと一緒にいる時も価値観が合わないと感じていたし、束縛じみた所も苦手に思っていた。一言、『別れよっか』と返して携帯を閉じる。しかし、すぐ携帯のバイブが鳴り、はあ、と思わずため息が零れる。

「どうしたの、硝子。ため息なんかついて」
「彼氏。めんどくさい事になってきたなーって」
「うまくいってないのかい?」
「そんな感じー」

夏油は頬杖をつきながらこちらに視線を送り、話を聞く体勢を作ってくれようとしているみたいだが、説明するのも億劫で、机の上に横向きに突っ伏しながら携帯を開く。

「彼氏って一般人だろ?どうせ、俺と仕事どっちが大事なんだってやつじゃねえの」
「高専の任務の事なんか話してる訳ないでしょ。ただでさえ宗教系の学校に通ってるってだけで、スピリチュアルな見方されんのに」
「ドラマの見過ぎでしょ」
「まあ、あながち内容は間違ってないけどさ」
「まじ?」

うへぇーとげんなりした顔で「よくそんな奴と付き合ってんな」と遠慮なく続ける五条に、「悟。思ってても口にするものじゃないだろ」と夏油が諭すように言い置くが、フォローしているようでなっていない。
この二人にデリカシーなど期待もしていないので、今さら咎める気も苛立ちも普段なら特にしないが、今の気分で絡まれると些か癪に触る。

「はあ…どいつもこいつも…」

メールで別れ話が済むはずもなく、手元の画面には『納得できない。会って話そう』と綴られている。そりゃそうなるよな、と了承の意図を最低限で返信し、携帯を閉じて今度こそこれ以上開くまいと制服のポケットに押し込んだ。

「リア充は大変ダナー」
「青春だねえ」

同情など少しも籠もっていなさそうな抑揚のない二人の声に、チッと大袈裟に舌を打つ。他人事なのだから、勿論コイツらには関係ない。
だからいつか、コイツら二人にも他人事と言えない日が来ればいいのに、と苛立つこめかみを片手で覆った。