04


「いらっしゃい……あ」

「あれ、御守さん?」

「……知り合い?」

今日はアルバイトの日。
ビッグバン・バーガーで笑顔を振りまくお仕事だ。
いつも通りカウンターに立っていると、先日知り合ったばかりの男の子が綺麗な女の子を連れて来店した。
外国人のような見た目、金髪で青い瞳。
二人きりだがデートとは言えない暗い雰囲気を纏っている。

「引っ越してきたばかりって聞いたけど、もうこんなかわいい女の子と知り合いだなんて、あなたも意外にやるわね」

綺麗な女の子はからかっているのか、ちょっと引いているのか不信な顏で来栖くんを見ていた。
マニュアル外で話しかけたのは失敗だったか。
顔見知りの人なんてほぼいないものだから、対応に慣れていなかった。

「あの、わたし、来栖くんが居候している喫茶店によくお邪魔していて、引っ越してきた当日にご挨拶したんです。それだけですよ」

にこりと警戒させないように仕事用の笑顔を作る。
わたしと関わったせいで、転校先で悪い噂が流れて迷惑がかかっては申し訳ない。
……わたしと関わった時点であまりよろしくはない状況なのかもしれないが。

「わたし、アイスティーで……先に席、とっとくね」

女の子は注文だけすると、店の奥へと歩いて行った。
茶化したり、問い詰めたりしたい訳ではなかったらしい。
ここへ来る前に何か嫌な事でもあったのかもしれない。

「今はそんなに混んでいないので、席に持っていきますよ。何か話すことがあるのでしょう?早く行ってあげてください」

「ありがとう、御守さん」

先日と変わらない微笑だ。
来栖くんは二人分の飲み物をわたしに告げて、先に席に座っている彼女の元へと向かった。
逆光で見えにくかったが、女の子の綺麗な顔は苦痛で歪んでいるように見えた。
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