形勢逆転-前哨戦-


執務室のドアを開けるや、ニヤニヤと何やら意味深な笑みを漏らすシオンと目かあった。

「何か良いことでもあったの?」
「あったのではない。これから起こるのだ」

今確信したとばかりに言うシオンに、エナガは嫌な予感を抱きつつも敢えて顔には出さなかった。
さっさと用を済ませて逃げるが勝ち、と、エナガは一度逸らした視線をシオンに向ける。
そこでふと机にある見知った菓子の存在に気がついた。

「ポッキー…?」
「欲しければ幾らでも持っていくがいい」
「幾らでも…?」

シオンの視線の先を追って下を見れば、目についたのは執務室には似つかわしくない段ボール箱。
近づいてよくよく中身を確認したところ、大量のポッキーが詰まっている。
差出人は……言わずもがな。

(沙織ちゃんしかいないよね…)

一体何のためにこれ程のポッキーを買い、そしてわざわざ聖域に持ち込んだのか。
シオンの物言いからするに、全て彼のためというわけではないらしい。

「要らぬのか?」
「そもそも私がもらってもいいの?」
「エナガが食べず誰が食べると言うのだ?」
「……シオン」

今一箱封を開けて食べているのはどこのどいつだ……。
口にこそしないものの、エナガがシオンを呼ぶ声に、そうした呆れが全て含まれていた。

「何も一人で平らげろとは言ってはおらぬ。どうせなら皆にも分けてやるがいい」
「皆って言っても、甘いものが苦手な人は……嫌がらせにならない?」
「(エナガから直接渡す)ポッキーだ。嫌がる者などいると思うか」
「……」

根拠が理解できない。
あからさまに不審な色を浮かべるエナガを、シオンは気にするどころか更に超展開な理論をぶちまけてきた。

「ならばムウにやるのだ。ああ見えて甘いものは嫌いではない。ついでに一ゲームでもして遊んでやっても構わぬぞ?」
「ゲームって…ポッキーゲームのこと?」

問いかければ、シオンから返ってきたのは肯定を表すような満面の笑み。
この男、弟子で遊ぶ気満々である。
そしてエナガでもまた然り…。
いよいよ呆れて頭を押さえたくなる衝動に駆られつつ、エナガはため息をついた。

「これ、サガさんからの書類です。あと、ポッキーは……これだけ頂いて行きますね」
「遠慮せずもっと持って行けばいいものを」
「三箱頂けたら十分です」

ぶちぶち文句を言うシオンを他所に、エナガは長居無用とさっさと執務室を後にした。

「さて……どうなるか。見物だな」

一人、シオンはほくそ笑む。
全て思惑通りとはいかないまも、仕掛けは完了した。
どうころぶか、後は結果を待っばかり。

その結果は約一時間後、シオンの元に再び訪れたエナガによりもたらされることになる。



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夢主が何故シオンは呼び捨てで、サガがさん付けかはまた別の話で書いていくつもりです。
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