大学生の木葉秋紀と遠距離恋愛3





順調だった筈の遠距離恋愛中の彼女との関係に一筋の亀裂が入りました。



世の中ってのは狭いもので。デート中に偶然にも彼女が短大時代の友達を見つけたと、声をかけた女の子2人組。
その片割れが、俺が浮気した1人目の相手だった。

俺もその女の子も驚きと焦りが顔に出てしまったため、飲み会で会ったことがある、とだけ言っておいた。
その後は俺的には上手く平然を装ったつもりだった。
しかし俺の演技が下手だったのか、彼女の女の勘が鋭かったのか、もしかすると両方かもしれない、あっけなくバレた。

「一線を越えた男女の顔って、意外と分かりやすいんだよ」

財布を買い替えたいと言っていたが、買い物は中止。そのまま俺の部屋へと帰る流れに。
その道中、彼女が先ほどの一言をぽつりと零した以外は痛いほどの沈黙が続いていた。
そして部屋に着くや否やベッドにどっかり腰掛け脚を組む彼女。

「秋紀も座って?」
「こ、コーヒー淹れてやるよ、な?」
「秋紀。お、す、わ、り」
「はい」

怒っている筈の彼女は、ずっと冷静な仮面をつけたまま。
それでも迫力が違う。即答でベッドに腰かける彼女の正面、床に正座した。背中に嫌な汗が滲む。

別れ話になるのだろうか、それは嫌だ。絶対嫌だ。
俺が120%悪いのは分かってるけど、もう絶対しないから許してほしい。
嫌だ嫌だとそればかりが脳内をぐるぐると駆け巡る。

「言い訳あるなら聞くけど」
「すいませんでした」
「弁解しないの?」
「お願いします別れたくないです」

彼女の言葉が、死刑台の上で受刑者に最期の一言を尋ねる執行人の声に聞こえた。
無理無理無理無理!咄嗟に頭も下げて、所謂土下座。
罵声も文句も何だって聞くよ、浮気しちゃったけどお前の事まだ好きなんだって。むしろ好き過ぎるが故の浮気なんだよ。

黙り込む彼女、顔は見えないけど、もしかして揺らいでるのか、と言葉を続ける。冷や汗は止まらない。

「もう2度としません許して下さい」
「そんな言葉、信用できない」
「本当ごめん!」
「だから、言葉より態度で示して」

執行猶予、というやつだろうか。今後の俺の身の振り方次第。
顔を上げたら彼女は顔を背けて不機嫌を滲ませていたけど、ひとまず別れの危機は乗り越えた。

「ーーっ!!」
「あと、今日は私に指一本触れないでね」
「え…」

抱き締めようと腰を上げた瞬間の宣告。
久々に会えた彼女と同じベッドで眠るのに、オアズケです。

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