勘違い その後/鎌先靖志


「俺に言わせろよ」「好きだ、付き合ってくれ」
経験値の低い私は単純なもので、途端に格好良く見えてしまったのだ、あの鎌先さんが。それでうっかりOKしてしまった。



誤解をきっかけに告白されて、成り行きと勢いだけで付き合い始めてしまってから、既に1ヶ月以上が過ぎていた。

珍しく部活が休みの放課後、靴を履き替えて寒空の下へ踏み出すと、鎌先さんがいた。
今日は3年の登校日ではないのに。それも珍しく1人だ。

「鎌先さん?何してるんですか?」
「部活オフって聞いて誘いに来た」

ああ。思い立ったら即行動な人だ、
計画とか連絡とか色々とすっ飛ばして来てしまったのだろう。

「先に連絡くれれば良かったのに。
 小原と青根もう帰ってますよ、二口はさっき廊下で会ったんでまだ居ると思いますけど」
「は?ちげーって」

皆でわいわい何か食べに行こうって誘いだと思ったのに、
私の言葉に眉をひそめた鎌先さん。これは、もしかして、え、でも、え?

「……まさか、私と2人、ですか?」
「おう」
「は?なんで?え?」
「なんでって、付き合ってる奴誘うのに理由がいんのか」

付き合うことになったその日以来、コイビトらしい雰囲気は一度もなくて、
それまでと変わらない様子に忘れかけてしまうけど。
そうだ、この人は私の彼氏、なんだ。

「ほら、さみーし行くぞ」

意識してしまうと、ほらまた。鎌先さんが、
脳ミソまで筋肉だと二口に馬鹿にされたような鎌先さんが、格好良く見えてしまうんだ。

簡単に手を取って、さっさと歩き出してしまうから、引き摺られないように慌ててついて行く。
行き先は部活帰りに皆で寄り道した鉄板焼き屋のようだ。女の子が喜びそうな所じゃないのが鎌先さんらしい。

誤解をきっかけに告白されて、成り行きと勢いだけで付き合い始めてしまったとはいえ。
手を繋ぐのにドキドキするとか、斜め後ろから眺める背中がやけに男らしく見えるとか、たまに向けられる視線に顔が熱いとか、本当に単純。
更には髪型変じゃないかな、ハンドクリーム塗っておけば良かったな、なんて考えているあたり、私もすっかり恋する乙女になってしまったものだ。
     2015.02.09

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