「あらおかえり。同伴だったの?」
「ただいま。うん。そうだよ。」
できるだけ平静を装い返事をする。
姉さんは そう、と返して お疲れ様 と呟いた。
仕事終わりだからこのまま部屋に帰って寝るのだろう。
ふとすれ違いざま様子を伺うために振り返ると
肩の後ろに鬱血痕があった。
「姉さん。肩。痕見えてるよ」
「え?はあ、最悪。昨日の客だわ。どこ?」
ここ、と背中寄りの左肩付近をさすってやる。
真っ赤になってて少し痛んでそうだ。
「髪、横に縛って隠すわ。ねぇヘアゴム持ってない?」
えっと、待ってね。
それだけ返してポケットをみた。
昨日寝るときに解いたから確かあるはずだ。
「あ、あった。はい」
ポケットからヘアゴムを出すと
それに引っかかって何かが床に落ちた。
それを見て私は しまった…と思う。
どうしてやり過ごせたはずの姉さんに
わざわざ声をかけてしまったんだろう。
「私のピアスこれ…アンタ、昨日誰と同伴だったの?」
「えっと…」
「はあ…どうして姉さんに言えないわけ?来なさい。」
廊下で立ち話すると目立つからって、
姉さんの部屋に連れてこられた。
わたしは何故か正座をさせられている。
「で、誰と同伴に出たわけ?」
「サンジくんだよ…」
隠しても反感を買うだけだ、と素直に白状した。
そもそも何故正座なのかも何故姉さんがこんなに怒っているかも謎だ。
姉さんはこの道が長いし
世話役時代の時から見てもプロなんだから
個人的な感情を抱いたり仕事の上で私情を出すなんてまずないはずだ。
「この際だから話しておくけどね…ママには言わないで。私、彼の愛人だから。」
愛人……………?
てことはお店の外で個人的に会って
お金をもらわず出掛けたり抱かれたりしてるってこと?
「姉さんの男に手を出すのはタブーよ。わかるわよね?客としてならいいわ。ましてやアンタは私の妹役なんだし、新人なんだから常連客を相手にするのには納得するもの。でもね、同伴は断りなさい。」
「、なんで」
「わかんないの?いくら同伴料をもらってるとはいえお店の外に出るんだから何があってもわからないじゃない。アンタが彼に抱かれるのが嫌なわけじゃない。でもアンタが彼に特別な感情を抱いたりするのは嫌なのよ」
「っ姉さん」
「わかったら出て行って。疲れたから寝るわ。ヘアゴムありがとう。あとサンジの部屋に行った時セックスに夢中になって落としちゃったピアスも。」
部屋を追い出され姉さんの部屋の前で腰を抜かしてしまったわたしを襲った感情は、絶望だった。