サンジくんを部屋から送り出した帰り
薄明るくなってきた廊下で仕事終わりの姉さんとすれ違った。
サンジくんからもらったキスマークに気づいた姉さん。
わたしの中に意地悪な心が生まれる。
「姉さんお疲れ様。昨日来たお客さんね、私の体がすごく良いみたい。夢中でつけられちゃった。そういえば今日は何曜日だったっけ?」
日付が変わって今日は日曜。
昨日はサンジくんが来る週末の土曜日だ。
賢い姉さんは気付くだろうか。
姉さんは予想外に勝ち誇ったように微笑んだ。
「沙羅…残念ね。サンジは痕なんかつけないわ。彼は店の女の子を喜ばせることしかしないもの。あなたが強請ったんでしょう?」
そう言って姉さんは
私と目も合わせずに部屋に消えていった。
悔しさと恥ずかしさで私は唇を噛む。
「くそっ…くそ…」
わたしが姉さんに勝てる部分は1つもない。
仕事でもスタイルでも頭の良さでも。
綺麗で頭もキレる姉さんだから、
サンジくんは愛人にしたいと思ったんだろう。
わたしもそんな姉さんが好きだ。
だから、だから悔しい。
わたしほんとは、そんな姉さんのことが
きっとずっと、羨ましかったんだ。
サンジくんにもらったキスマークを撫でる。
まだピリリと痛む。彼を感じれる。
彼のものになりたい。絶対叶わない願い。
………もうだめ。私とっくに、溺れちゃったみたい。
「あんたたち喧嘩したの?」
部屋に戻る前にママのところへ報告に行くと
鋭いママは全てを悟ったように語りかけてきた。
「喧嘩っていうか、わたし姉さんに嫌われちゃったみたい。」
「だからあの客には気をつけろって言ったのに。あんたたち若いし親がいないから、ちょっと優しい客がいるとすぐ溺れて行くんだ。」
気をつけろって、やっぱりそういう意味だったんだ。
「仕事、辞めるんじゃないよ。わかってるね?」
「はい…ごめんなさい。」
娼婦を辞めることなんて、
この世界から抜け出すことなんて
きっと、私たちには叶わない夢。
私たち姉妹は生きていく術をこれしか知らないんだから。
男に媚びを売って優しくされることしか。
「サンジくん…会いたいよ…」