ほかほかの湯気の向こうから大好きな声が聞こえる。
ずるいよ。その声で囁かれたら、その指で弄られたら、全てを許してしまいそうになるんだから。
「うん。ごめんね、サンジくんお客さんだから、楽しんでもらわないといけないのに、」
「うーん…それは違うよ。確かにオレは客だけど、お金払って沙羅ちゃんを抱きたいってより、沙羅ちゃんに笑顔でいて欲しいだけなんだからさ。」
そっと伸びて来た手が私の耳を擽る。
2人とも裸で、甘い雰囲気なのに子どもみたいな茶化した愛撫に思わず笑顔が溢れる。
「ほら。やっと笑った。」
でもどうしてなんだろう。
やっと笑顔になれたのに、
サンジくんの笑顔を見ると何でだか泣きたくなるんだ。
「ちゅーして、サンジくん。」
嘘でもいい。そう思ってしまったんだ。
今はただ茶化して誤魔化して、
本当のことをはぐらかしていて欲しい。
私が得られる幸せはきっとそれだけ。
でもそれでもいいって思えてしまうんだから片思いは残酷で怖い。
目の前の現実を見ないように、目を伏せて唇を押し付けあうのだった。
「好きだよ沙羅ちゃん。」
この世で1番死にたくなるような言葉を聞きながら。