この場を穏便に済ますためには。
オレのせいで沙羅ちゃんが責められるのは嫌だ。
けどすごく可哀想なことをした。
好きだと言ってくれたのに。オレはどうして応えられないんだ。
言われるままに彼女の姉さんを抱いた。
沙羅ちゃんとさっきまで過ごした部屋で
沙羅ちゃんが外にいるのに。
これも、事を穏便に済ませるためだと自分に言い聞かせながら。
沙羅ちゃん…また泣いてるだろうか。
沙羅ちゃんに笑顔でいて欲しい。
オレは彼女に、幸せでいて欲しいだけなんだ…
「サンジ。シャワー空いたわ。」
「あぁ…ありがとう。シャワーしたら帰るよ。」
煙草をふかしながら
そちらを振り返らずに答える。
シャワーが空いたと伝えに来た本人はオレの隣に座った。
「………………」
珍しく、彼女は黙っていた。
いつもは、「今日もよかったわ」なんて言って
腕にしがみついてくるところだ。
「どうしたの?」
「サンジ…沙羅のこと、好きなのね。」
そう言われて、オレは目を見開いてハッとしてしまった。
オレが、沙羅ちゃんを?
そりゃオレは女の子にはみんな幸せでいて欲しいと思っているけれど、
「…どうして?」
「あなた変わったわ。前まで…そんな風じゃなかった。店の女の子みんなに優しくて、誰を見る目も平等で、誰を抱く時も同じ顔をしてたわ…けど、今のあなたは、私を見てない…」
「、それは」
「ねぇ教えてよ……あなた、誰を愛してるの?」
「オレは……………」
沙羅ちゃんのことが、好きだ。
押し殺してきたけど、きっとそうなんだ。
「でもオレは君のことを嫌いになったわけじゃ、」
「わかってる。わかってるわよ。それがあなたの優しさだってことも。」
「っ、」
「でも、本当に女の子のことがみんな大切なら、考えてみて。あなたのその優しさでどれだけ残酷な思いをするか」
「………」
「沙羅もいま、きっと同じ気持ちだわ。」
姉さんのこと好きなの?
そう聞いた時の沙羅ちゃんの表情が蘇る。
きっと辛かっただろう。姉さんのことが好きな相手から優しくされるのは。
「っオレ、」
「行きなさい。私のことはいいの。…さっきあなたに抱かれながら、これが最後だって思ってた。」
「ごめん。」
「そーゆーところ。やめてよ、惨めだわ。」
「…ありがとう。」
「サンジ、好きよ。あなたのこと、愛してた。」
「…オレもだよ。でも、行かなきゃいけないみたいだ。」
「そうしてちょうだい。」
そう言って彼女は先に部屋を出て行った。
その後ろ姿がすごく切なくて
オレはとてつもなく自分を責めた。
体を洗い流さなければ。
綺麗な気持ちで沙羅ちゃんに会えるように。
シャツを肩に羽織って最後のタバコに火をつけた。