そろそろだとは思っていた。
あの後結局沙羅ちゃんには会えなかった。
他の客と同伴に出ていたみたいだ。
奪い返せなかった自分がカッコ悪い。
けれど仕事に戻らなければならずオレは今店にいる。
そしてジジイから出航の話を告げられたのだった。
「しかも今晩かよ…クソ、間に合わねぇな…」
オレ1人の都合でジジイの予定を狂わすことは出来ない。
けれど今朝同伴に出たばかりの沙羅ちゃんは明日の朝まで戻らないかもしれない。
もうすぐここでの最後のディナータイムも始まる。
仕込みもすぐには終わらないだろう。
せっかく自分の気持ちに気づけたこんなタイミングで。
こうなりゃ最後の手段を取るしかない。
すごく申し訳ないし傷つけることになるかもしれないけど
彼女の姉さんに力になってもらうことにした。
「もしもし?」
『サンジ…何よ今更。』
「本当にごめん。今大丈夫?仕事は?」
『これからよ。なぁに?」
「今夜出航することになって、それで、沙羅ちゃんにオレ、まだ会えてないんだよ」
『はあ。何してるんだか。沙羅なら今同伴に出てるわ。彼家庭があるみたいだし、今夜中には戻ると思うけど。』
「本当か!?よかった…なぁ頼みなんだけど、沙羅ちゃんにここに来てもらうことはできねぇかな?」
『…わかった。伝えとくわ。』
「本当に助かる。悪いなこんなこと頼んじゃって」
『あなたのためじゃない。あの子の幸せのためよ。』
「…本当は沙羅ちゃんのこと、大好きで守りたいんだろ?」
『……………』
「全部わかってるよ。それじゃあ、頼む。ありがとう。」
『…馬鹿な男。』