内心気が気ではなかった。
いくら姉さんからの伝言と言っても
沙羅ちゃんは本当にここへ来てくれるだろうか。
そしてどう言って君を連れ去ってしまおう。
仕事や姉さんのことは彼女はどうするだろう。
男サンジ、一世一代の告白を今夜行うわけだ。
さて、オレは1人厨房に篭ってタバコをふかしながら
スペシャルディナーの準備を始めた。
彼女の喜ぶ顔を思い浮かべながら
今までのことを思い出す。
繊細で今にも壊れてしまいそうな哀しそうな顔の姉さん。
出会った時、血の繋がらない妹がいると
彼女のことを大切そうに話し始めた。
二個下だからデビューは再来年。その間にオレは
彼女の姉さんに求められて愛人関係になったけれど
正直愛人以上の関係にはなれないと思っていた。
レディーはみんな大切だ。オレが幸せにしたいし守りたい。
けれど彼女の言葉のどこに真実があったのだろう。
彼女の生まれ育った環境と今までの人生が、
彼女の心を完全に凍らせてしまった。
もちろん、オレの今までの人生においてもそうだ。
生まれて来てよかったのだろうかと考える毎日だった。
そんな姉さんやオレの心を溶かしたのは
純粋で心温かい沙羅ちゃんの笑顔だった。
初めて会った時、これは守りたくなる、愛したくなる。
強くそう思ったものだ。沙羅ちゃん。
オレはこの感情を単に今まで出会って来たレディー達に抱くそれと同じと思っていたよ。
君の姉さんに、オレの気持ちを聞かれるまでは。
今では人生の全てに感謝ができる。
こんな風に、好きな女の子に気持ちを伝える機会が与えられたんだ。
店の方で扉の開く音がした。
か細い足音はオレに向かって聞こえる。彼女だ。
「いらっしゃいませプリンセス。海上レストランバラティエ副料理長のサンジです。特別ディナーをご用意しております、奥へどうぞ。」