食後酒を喉に流しながら
それを運んで来てくれたサンジくんに話しかけた。
プリンセスへのスペシャルフルコースです、
だなんて給仕係というよりは王子様みたいな風貌と雰囲気でそう言われるものだから私はサンジくんのお料理を頂きながら終始ドキドキが止まらなかった。
サンジくん今忙しい?1人で飲むのは寂しいから座ってよ。
そうお願いしたら彼はもう1つグラスを持って隣に座ってくれた。
お酒を注ぎながら彼をチラリと見る。
頬が赤い。口元は嬉しそうに緩んでいる。
「乾杯。今日は本当にありがとう。」
「いやこちらこそ…。沙羅ちゃんが喜んでくれて嬉しいよ」
きっとお互い話したいことが沢山ある。
夜はどんどん更けていくのに私たちはたわいもない話しか出来なかった。
「本当に美味しかった!サンジくんのお料理大好き。美味しいだけじゃなくて、思いやりが詰まってる感じがして」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。料理は愛情だからね。皮むきひとつにもこだわって作業したいんだ。」
「サンジくん本当にお料理が好きなんだね。私も何か夢中になれるものが欲しいな」
「沙羅ちゃんは仕事頑張ってるじゃないか。すごいと思うよ。君の仕事はオレの力になるんだから。」
「そうかなあ。だったら嬉しいな。」
「うん。そうだよ。オレ、沙羅ちゃんに沢山元気もらってるよ」
「…好きだよ。」
「…えっ?」
「あっ」
また自然に声が出てしまった。
そうだ。前にここでサンジくんから上着を借りた時。
どうしよう。今度はごまかせない。気まずくなって下を向いた。
「…この間は、ごめんね。」
ふとサンジくんがそんなことを呟く。この間って
「…姉さんとのこと?」
「…うん。オレもうわかったんだよ。本当は…好きとか愛してるとか、オレわかってなかったんだ。レディーはみんな大切だし幸せにしたいと思ってた。けど」
時間が止まった。何故だか手が震える。
手元のグラスの中のワインがゆらゆら揺れた。
「オレが笑顔を見たいと思うのは、沙羅ちゃんだけだった。」
「サンジくん………」
「好きだよ。沙羅ちゃんのことだけが。」
隣に座っているサンジくんがわたしの肩を抱く。
少し泣きそうだ。サンジくんを見つめた。
サンジくんは優しい表情をしていた。
いくら座っててもまだ身長差がある。
サンジくんが少し背を曲げる。顔が近づく。目を閉じる。唇が、触れた。
「今夜、バラティエはここを出航する。
…沙羅ちゃん、オレと来て欲しい。君を連れ出せるならどんなことでも」
「サンジくん。」
「っ、はい。」
「ふふ。そんなにかしこまらないで。私の気持ちはもう決まってるの。私はもう、自由の身だしね。」
「…え?」
「姉さんが、私のこと買ってくれた。姉さんね、出て行ったの。新しい人生を歩むんだって。」
「、姉さんが…?」
サンジくんはそう呟いて少し考えると
ハハハ、って笑いながら片手で顔を抑えて席を立ち上がった。
「あの子は本当に…最初からこのつもりだったのか。」
「サンジくん」
「ったく。オレにもちょっとは格好つけさしてくれよ…沙羅ちゃん。」
「はい……ふぇっ!」
突然サンジくんにお姫様抱っこで抱え上げられて
おかしな声が出てしまう。個室の扉を蹴り開けて
サンジくんは私を抱えたままホールを駆け抜ける。
お客さんも従業員もみんな私たちを見てる。
「さ、サンジくん!?」
「オーナーゼフ!!!!」
サンジくんの大声に落っこちそうになる。
首にしっかりしがみついて顔を上げると
強面なヒゲでガタイのしっかりした男の人がいた。
「彼女をホールとして雇うことにした。オレの…1番大切な女の子だ。出航するなら彼女を連れて行きたい。」