膝枕

「ちょっ、恭弥!痛いんだけど」

無理に腕を引っ張られ、校舎の一室に連れられる。
そこは革張りのソファーにテーブル、
窓際には立派なデスクと触りやすそうな椅子。
学校の一室にしては豪華な、客人をもてなすための部屋といった感じだ。

「ここは?」
「応接室。風紀委員が使っている。」
「応接室を…委員会の部屋に。」

これが雲雀恭弥、最強の風紀委員の力なの?

「それで、何の用なのよ」
「…寝る」
「はっ?」
「眠いから、膝を貸して」
「……はっ??」

全く意味がわからない。

「あの、どういうこと?」
「そのままだけど」
「いやいやいや、何であたしが?」
「良い匂いがする」

全く意味がわからない。
状況が全く理解できない中で、掴まれたままの腕を恭弥は顔に近づける。
その動きが何だか綺麗でみとれていると、彼はブラウスの腕の部分を鼻にあてて息を吸い込む。

「ちょっ…!何してんの!!」
「君の匂いが好きだから、君の膝で眠りたい。言っておくけど僕は木の葉の落ちる音でも目を覚ますからね」
「はあ…ってごめん。全然わかんないんだけど」

恭弥と出会ったのは1週間前。
まともに話したのは、昨日が初めてだ。
なのに。昨日の今日で?膝枕?わけがわからない。
恭弥の言葉に呆気に取られている間に肩をぐっと押さえられ、重力に任せてソファーに腰を落ち着けた。

「あ、あのー…」
「なに」
「木の葉の落ちる音で目を冷ますほど神経質なのに、人の膝で眠れるんですか…?」

そこかよ!と自分でツッコみたくなった。
人間、理解できない状況に陥ると細かいどうでもいい点を口にしてしまうらしい。

「だからだよ」
「へ?」
「…昨日わかった。君の匂いは、落ち着く」

あれよあれよと言う間に、恭弥は私の膝に頭を乗せる。漆黒の髪が私のスカートの上で形を保てずに広がる、このまま寝たら変な寝癖になりそうだ。
丸い頭が可愛い、そしてちょうどいい重みに心地よさを感じてしまう。
…わけはわからないけど、悪い気はしないのは、確かだった。

「よく眠れそうだ。動かないでね」
「緊張するんですけど」
「それは僕の知ったことではない」




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