ストレートには弱いのです



「流ちゃん大丈夫?」
「んっ、問題ないです。感謝です」
「いえいえ、王様のご命令ならなんだって、ってね」

カチンっ、と音を立ててベルトを締める。流ちゃんの心臓の代わりを務める力を外に放出するのを抑える為に、拘束具が必要だとイワさんは言っていたが、これはなんというか…。名前はそこまで考えて無意識に口を開く。

「流ちゃん、えっちだよね」
「?俺ですか?」

真っ白な車椅子に座り、首を傾げる比水に名前は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、考えていたことが口に出たのか、と妙に納得した表情になった。名前が無意識に思っていることを口にすることはよくある事だ。特に驚きもせず、名前はちゃぶ台の前に座り演劇でも始めるかの様にごほん、と咳払いした。
そして、ちゃぶ台に勢いよく手を付き、名前と比水しかいない部屋で声を上げる。

「だってだって、拘束具男子だよ!?いやらしい感じしかしないじゃない!!いけないことしてる感じだよ!!大変良い!」
「名前は拘束されることに喜びを感じるのですか?」

頭の上に疑問符を浮かべさらに首を傾げる比水に、名前はなんともいえないような表情を作る。違う、違うんだよ流ちゃん、と首を振る。

「イケメンを縛る方に意味があるのさ……私みたいなのをエロ同人のようにしたって需要がなさすぎるぜ流ちゃん」
「疑問です。名前が俺の様に拘束されていると想定すると俺は興奮します。需要の発生です」
「ファッ!?な、ななな流ちゃぁあ!?も、もの凄いことを言われた気がするんですがえぇぇ……」

ミッションを言い渡す時のようなトーンで、とんでもないことを言い放った比水に名前は、頬を赤く染め手で顔を覆い隠す。心臓の音が耳の近くで鳴り響き、頭が煮立った鍋のようにぐらぐらする。

「な、流ちゃん、え、エイプリルフールにはまだ、はは早いぜ?」
「嘘ではありません。事実です」
「いや、まっ、」
「名前、」
「は、はい」

いつもと変わらない表情、いつもと変わらない声色、でもどこか真剣味を帯びていて名前は思わず正座をして姿勢を正す。

「俺が、石盤を入手した際には、君に交際を申し出ます」
「んん゛!?」
「今から返答を考えていてください」
「う、ぁ……は、ひぃ…」

名前の体が揺れたと思えば、バタン、という音と共に名前が畳の上に倒れる。

「おーおー、嬢ちゃんもお前の真っ直ぐど真ん中の告白にゃあ弱かったかー」

襖を開いて部屋の中に入ってきた磐舟に、比水は少し眉を寄せる。いつから居たのですか、イワさん。と言う比水に磐舟は笑を返すのみ。
倒れた名前をソファの上に寝かせる磐舟に、比水はイワさん、先ほどの発言は否定です。と言った。なんのことか、と眉を寄せた磐舟に、比水は少し唇を尖らせる。

「俺はまだ告白していません」
「……はははっ、そーかいそーかい!じゃあ告白できるように頑張らねぇとなあ」
「はい」

そうして比水は少し嬉しそうに笑った。


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