チャイナドレスのスリットから伸びる白い腿を撫でると、ぴくりと跳ねる身体。薄い唇に自身の唇を押しあてるとくぐもった声が漏れる。官能的なそれに口角を上げると、涙で潤んだ瞳がこちらをきつく睨みあげる。
「へん、たいっ」
「あははっ、こんな格好させられて興奮してる伏見くんが言うの?そっくりそのまま返してあげるよ。変態」
「ぁ、っ」
赤いイヤリングがぶら下がる右耳を噛んでやると、薄い唇からまた声が零れた。
「かーわいいなぁ伏見くんは、」
「きも、いっ、やめ…ろ」
「私の服の袖離せたら、ね?」
「うぁっ、っ!」
力いっぱい握りしめられた袖を指しながら、服の上でもわかるくらい主張するそこを膝で刺激する。伏見の身体が大げさに揺れ、逃げようとするが、名前は伏見の足を掴み手に青の力を集中させる。力の入った足に青の力を流しこみ、その足の"秩序"のベクトルを少し、ずらす。ゆるりと足の力が抜け、伏見は脱力したようにベッドに伏せる。
秩序を守る青のクラン、その隊員が秩序を守るための力で秩序を乱すな、などと怒られてしまいそうだが、暴れる伏見が悪いと名前は言い訳する。
「室長ほどではないけど、私にもそういう使い方は出来るんだよ。良いお勉強になったね伏見くん」
にっこりと綺麗な笑みを作った名前を、力の抜けた伏見はやはり睨みつけることしかできない。
頼みがある。と言ってきた彼女の言うことを馬鹿正直に信じたのが間違いだった。「これを着た伏見くんの写真を撮ってきてください。って室長に言われたの!」と泣きそうな表情で訴えかける彼女に渋々頷いたのがこれの始まりだ。
普段はおっとり、温和な雰囲気を纏い、仕事はそこそこできる隊員。だと思い込んでいた。他の隊員もそうだろう。伏見の上に跨る彼女の笑顔は普段と変わらない。しかし、笑顔の裏には、普段の彼女からは到底想像もできない欲が見え隠れしていた。
「伏見くんにはさ、メイド服も似合うと思うんだ!」
「は?」
「ナースさんもいいよね。今度お医者さんごっこしよっか〜あ、伏見くん女子隊員の服着てみてよ、絶対似合うからさ!」
パン、と手を叩き、無邪気な笑顔でそう言う彼女に伏見は背筋がゾッとする。チャイナドレスなどと言う服にもうんざりしている。赤の力を使ってでもいい、燃やし尽くしたい気分だ。と考えた時、伏見の口元に初めて笑みが浮かぶ。そうだ、赤の力を使えばいい。最悪、脱ぎ捨てられるように置かれた隊服の元までたどり着ければ、ナイフがある。
善は急げ、名前が妙な妄想に浸っている間に、ベッドから逃げ出そうとするが、名前も特務隊の人間、そううまくいくはずもなく、素早く手が伸びてくる。それに合わせ、炎を纏った右手で名前の手を掃った。左の鎖骨辺りに熱を感じる。
「てめぇのお遊びに、いつまでも付きあってられるか!」
「あ、駄目だよ伏見くん」
思い出したように言われた言葉に眉を寄せるが、火傷でもしたのか伸ばした手を引っ込めてゆるりと摩る名前がどうしてか気になった。追いかけてくる気配はない。伏見は素早く隊服を拾い上げ、片手にナイフを握る。しゃらり、右耳に付いたイヤリングを引きちぎるように外す。
「あーあー伏見くん残念だなぁ」
「あ?」
「まだ、立っちゃだめだよって注意してあげたのに」
にこり、どこか嬉しそうに笑った名前は右手を掲げ、パチン、と指を鳴らす。その瞬間、伏見の足から力が抜ける。
「っ、」
辛うじて床に手を付き、どこかを打つということはなかったが、膝から下に力が入らない。ギ、と名前を睨みつけるが返ってくるのはいつも見ている柔らかい笑みのみ。
名前はゆっくりとベッドから降り、四つん這いになっている伏見の前にしゃがむ。
「ほん、と……伏見くんは可愛いなぁ」
「なに…した」
「そういう使い方は出来るって言ったよ。お勉強したのに、伏見くんって実は馬鹿なのかな?」
「っ…」
まぁ、そんなところも可愛いよ。と微笑む名前。伏見のセットされた髪に指を通し外されたイヤリングを付け直す。
「まだ、遊べるよね」
そう言って名前は伏見の額にキスを落とした。
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