重い。
「俺の唯一の、自由です」
重すぎる。
「お望みならば、戦いを」
薄く笑った比水に、名前は静かに目を閉じた。
重い、比水の言葉の一つ一つが肩にのしかかり、体の動きが鈍くなるような感覚。それを不快だとは思わない。けれど、重すぎるそれを背負って立つことは、難しい。
戦いで負けるとは1ミリも思っていない。石盤が壊されるなどとも思っていない。
真っ直ぐ前だけを見据え、自らの夢へと足を進める比水の言葉は、名前にとっては重すぎる。
あの石盤に与えられた能力でみえる先の世界。白銀の王によって壊された石盤に、異能を失い止まる比水の心臓。ゆっくりと満足気に目を閉じた彼の姿が瞼にこべりついて離れない。
その先は、みえない。
異能が失われるからか、石盤が壊された後の世界は真っ白だ。何者にも汚されていない真っ白な世界。そこに彼がいないのかと思うと、彼の発する言葉の一つ一つが、重い。想い。
彼は、知っている。石盤が壊され、自身が本当の意味で死ぬのだと、その未来がみえたとき、名前は比水にそれを教えたのだ。しかし、比水は子供のような無邪気な笑顔を浮かべ、そう言った。
「未来は絶対ではありません。俺は緑の、改変を司る王です。名前のみたその未来も、俺が改変してみせます。心配無用です」
自信たっぷりに、そう、言った。
まるで少年漫画の主人公みたいだ。なんて、名前は馬鹿にしたように笑った。
比水は不思議そうな顔をして首を傾げていたが、名前は嘲笑を浮かべたまま比水を、自らの王を、見下すように見た。
「未来なんてもんは、決まってるんだよ」
瞬きを一つした比水は、名前の言葉をゆっくりと咀嚼し、理解する。そして、やはり、子供のような無邪気な笑みを浮かべた。
「では、賭けをしましょう。名前のみた未来を俺が改変出来れば、名前には俺の所有物になってもらいます」
「は?所有物って…」
比水は薄く笑うだけ。遠回しに告白されているのかと気づいた時には既に、顔に熱が溜まっていた。比水から逃げるように視線をそらせば、緑色のオウムがこちらを見ている。居心地の良さは最悪。
コトサカを通じて全てを見られているような気分だ。いや、実際そうなのだろう。
唯一の、自由。
重い、言葉。それが頭の中でリピートされる度、胸の中にもやが広がる。
むしゃくしゃしてコトサカを両手で掴むと、当たり前のように甲高い声を上げてオウムは暴れだす。唐揚げにして食ってやりたい気分だ。
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