やっぱり、



特別、便所で食べる飯を美味いと思ったことはない。
ましてや、朝の一時限目。朝飯をちゃんと食べなかったのかと聞かれると、そうでもないと答えよう。カロリーなんちゃらを一本口に咥えて、少女漫画の様に猛ダッシュを決めてきたところだ。勿論、女の子にも男にも、誰にもぶつからずに学校へ着いた。もう一つ言えば、別に遅刻をしていたわけでもない。
本日二つ目のカロリーなんたらを咥え、頭上で青白くチカチカと点滅する天井を見つめていた。
口内に広がるチョコレートの甘さをしっかりと噛みしめ、隣から聞こえてくる声に首を傾げた。はて、黒色は一人で喋る奴だったかな?なんて、ロックの開く音と、扉の耳に残る嫌な音を聞いて、のっそりと便器の上に上履きのまま乗っかった。

「…………おぉ…」
「うぉっ!?お、おまっ!」

SF映画で見た様な青白い画面とキーボード。画面の中で綺麗に揃ったキューブに懐かしいな、なんて感想が浮かんだ。一面だけでも苦労するのに、画面の中では5つのキューブがすべて同じ色に染まっていた。

「うぉっおおま?何語?」
「、いつから居たんだ…?」

茶色と黒色が驚いたような顔をする。最初から、と言えばいるなら言えよ!と茶色が叫んだ。
何故わざわざ自分から申告せねばならんのか、と思ったが、すぐにどうでもよくなったので、適当に、何してんの、と上から声を掛ける。こんなに会話を続けようと思ったのは久しぶりだ。

「ふへ〜、で…じゃんぐる、ってなんだ?」
「知らねぇで聞いてたのかよ!」
「タンマツのアプリ」

学校の便所の個室に三人。少し窮屈で汚らしいが、特に、居心地が悪いとは感じなかった。ギャイギャイとうるさいガキ共のいる教室に比べると、居心地はいい。オレもガキだ、なんてよく知ってるからツッコミは無しだ。
黒色と茶色から聞く話によると、じゃんぐるって言うアプリが最近流行っているらしい。
タンマツ持って無いから関係ないか、と言うと茶色は勿論、クールそうな黒色も目をまん丸にして驚いていた。

「今のご時世、タンマツ持って無いとか正気かよ」
「別に、困ることないしなぁ…連絡とる相手もいねぇし、とりたいと思う相手もいない」
「おまえ、寂しい奴だな……」

安心しろ。オレはそう言って微笑んだ。滅多に浮かべない笑み、茶色はなんだと眉を寄せ、黒色は興味の無さそうな視線を送っていた。一回目を閉じて、たった一言を言うだけのために息を吸う。便所特有のにおいが鼻につき、気持ち悪かった。

「こんな便所の個室にいる時点で、お前もオレと同類だよ」
「うっ、ぐ……!」
「仲間が出来たじゃないか。やったね」
「嬉しくね――!!」
「うるさ…」

さっきの作った笑顔じゃなくて、次は勝手に笑みが零れた。




《やっぱり、》始まっている。

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