これは、



「ミッションスタートなんです!」

高い女子の声が聞こえた。
ぱちん、と目を閉じて、開くと、茶色と黒色と目が合った。これはまずい。何処かでオレの本能が警報を鳴らす。
教室に行くにも茶色と黒いと、あとよく分かんないのがいる場所を通らなくちゃいけない。地面から引き上げようとしていた革靴を元の位置に戻して、履きかけだった上履きはロッカーの中に戻した。その間、僅か二秒。なんて自己新記録、とか思っていると、方向転換して後ろを向いた瞬間。後ろに向かって奴らに引っ張られた。カエルが潰れた様な声が喉から出てちょっと痛い。
妙な体制で二人を見上げ、ここで初めて、こいつらの目の色が青っぽいんだなとか、黄色っぽいんだなとか思った。オレにはない、いい色。だ。

「道連れな」

ニッコリ笑った黒色の笑顔はレアだったけど。正直欲しくなかったレアカードだ。



ばっくれようとも思った。でもなんだか、あの2人に置いていかれるのに嫌な感じがして、誰もいない家に鍵を閉めた。
だらだらと歩いて集合場所に行くと、もう既に3人集まっていて、オレが最後みたいだった。
女子生徒と茶色がなんか言ってたけど、そんなのは全く頭に入らない。
4人でタンマツから伸びる青白い光を見て、目的地を確認。茶色が得意げにまた何かを言っていた。


オママゴトみたいにシートを広げてお菓子やらを広げているのを横目に、ビルの屋上の柵に背中を当てる。痛い。
隣に座った黒色の持っているタンマツを覗き込むと、怪訝な顔で睨まれた。
タンマツに映るのは、またルービックキューブが並んだ画面だ。それをみて自然と口が開いた。こいつらといると変な感じだ。

「オレ1面も揃えられねぇんだよな…」
「…あっそ」
「……、なんかコツとかあんの?」

ルービックキューブに興味がある訳ではない。この繋げられた会話を切ることがなんだか嫌だった。
静かにぽつりぽつりと黒色が説明してくれるが、オレの頭にはきっと、その内容の半分も入っていないんだろう。

「すげーなお前、全くわかんねぇ」
「はぁ?チッ、折角人が説明してやってんのに…」
「でもまあ、お前の話聞いてるだけで楽しい、ってのかな……すげぇ、たのしい」
「………なんだよ、それ」
「なんだろーな」

照れたようにそっぽを向いた黒色をからかうと、顔面にべちん、と掌を押し付けられた。痛い。

なんか食っとけ、と茶色がコンビニの袋を広げ、黒色がその中にあったチョコを手に取る。その際に見えたおにぎり達に、米か…、と落胆。カロリーなんたらを持ってくればよかったと後悔していると茶色がオレにもなんかいるか?と聞いてくる。それに首を振り雲で埋め尽くされた空を見上げた。ひやりとした風が頬を撫で程よく冷やしてくれる。
ぽつぽつ、と隣で茶色と黒色が喋る声が聞こえる。それも心地いい。

暫くすると女子生徒の声がして、茶色に何かを頼んでいる。茶色がでかいぬいぐるみの付いたタンマツを耳に当て、大きく息を吸う。そして次の瞬間、そこから出た声に息が詰まる。
ぐっとお腹を押されているような感覚に思わず息が漏れ、それと同時に隣からもくっ、と笑い声が聞こえた。
顔を覆い隠し静かに笑う黒色に、さっきこみ上げてきた笑いとは違うものがふつふつと上がってくる。うん、これもいい。




《これは、》幸せってやつなんだろう。

-4-

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